将来に向けた車載半導体の安定確保へ、半導体メーカーをくすぐるニーズを示す : MONOist 2023年展望 (3/3 ページ)
製品カタログをみて半導体を仕入れる場面や、代替がきく半導体を使う場面は、当然これからもあるでしょう。ただ、自分たちが勝とうと思っている領域でカタログに載っている半導体を選ぶのは「二番煎(せん)じになり、誰かが決めた範囲の中でしか勝負できなくなる」と大村氏は危機感を示します。
半導体メーカーを振り向かせるニーズを示した企業は、そのニーズを踏まえた半導体が製品カタログに載る数年前からその半導体を使って何をするのか、どのような業界標準を実現するのかを考えています。必要なIP(Intellectual Property:知的所有権)も手の内にあり、標準化への仕込みやソフトウェアの準備も迅速に進みます。そのIPのために生産設備が決まることもありますので、そうなれば「自分たちのために半導体を作ってもらう」という理想形に近づきます。
これに対し、製品カタログをみて仕入れるところからスタートすると、業界標準を理解し、IPを使いこなすまでに時間がかかり、出遅れてしまいます。IPのライセンス料の支払いも発生します。社外からの技術的なサポートを受けざるを得ない場面も出てくるでしょう。
自社のニーズを半導体に反映して競争力を高め、差別化を図っている企業の好例はApple(アップル)だといえるでしょう。Google(グーグル)やソニーグループなども同様ですし、日本の自動車業界ではデンソーとエヌエスアイテクス(NSITEXE)が代表的です。
自動車に関して、半導体メーカーを動かすようなニーズを描けるのは、自動車メーカーだけではありません。自動車の全体像や将来像に向けて自社の技術がどう貢献するのか、という視点を持ったサプライヤーも増え始めており、モデルベース開発(MBD)が大きく役立っています。
全体像を見始めたこうしたサプライヤーにとって、目先では「ほぼ完成品のシステムを求める自動車メーカーに売り込むため」という動機が大きいかもしれません。しかし、最終製品の全体像を見ながら自社の競争力を磨くのは、半導体メーカーが動くようなニーズに落とし込むことにもつながり、将来における半導体の安定確保にも結び付いていくことでしょう。
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デンソーが今後10年で10兆円を投資する「5つの流れ」
デンソーは2022年12月15日、オンラインで事業説明会を開き、2035年に向けた取り組みを発表した。「人流」「物流」「エネルギーの流れ」「資源の流れ」「データの流れ」の5つを網羅し、循環型社会の実現に向けた技術開発を進める。これらの領域に今後10年間で10兆円規模の投資を実施する。
自動運転の「判断」のデファクトを狙う、デンソーが半導体のIP設計で新会社
デンソーは、自動運転システムの「判断」を担う半導体IPを設計する新会社を設立する。会社名は「エヌエスアイテクス(NSITEXE)」で、デンソーの完全子会社となる。資本金は1億円。売り上げ目標などは非公表。
2nm半導体の国産製造会社「Rapidus」始動、トヨタら8社が出資し5年で量産開始
経済産業省は2022年11月11日、次世代半導体の設計・製造基盤の確立に向けた取り組みとして、新しい研究開発組織「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)」の2022年内の立ち上げと、製造基盤確立に向けた研究開発プロジェクトの採択先を「Rapidus」に決めたことを発表した。
なぜ日本で2nmの先端ロジック半導体を製造しなければならないのか
半導体などマイクロエレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2022」が2022年12月14日に開幕し、オープニングキーノートパネルとして、新たな半導体製造会社であるRapidusなども含む「半導体・デジタル産業戦略」に深く関わる主要メンバーが登壇し「グローバルリーダーを目指す産官学戦略」をテーマに、日本における半導体産業の在り方や社会変革の方向性などについて語った。
分かっておきたい、IP活用の落とし穴
FPGAやLSIなどの回路設計において、重要なアイテムとして注目されているIP。このIPを活用する際に知っておきたいポイントとは?
自動運転やAIに適した組み込みプロセッサIPの新ブランドを発表
エヌエスアイテクスは、組み込みシステム向けプロセッサIPを含む新ブランド「Akaria」を発表した。自動運転やエッジAIアプリケーションに適する。
デンソーが新領域プロセッサ「DFP」の開発を加速、米スタートアップに追加出資
デンソーは、同社グループで半導体IPの設計、開発を手掛けるエヌエスアイテクスが、米国のスタートアップ・シンクアイに出資したと発表した。シンクアイは、エヌエスアイテクスが開発を進める、自動運転技術に求められる複雑な計算処理に最適なDFPを効率よく処理する技術を有しており、今回の出資でDFPの開発を加速させたい考え。
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