複数人のユーザーとの会話と協力を必要とする組み立てや実際の使用は、月や火星での基地建設作業を想定した活動におけるチームビルディングと訓練の検証で有効だという。閉鎖的な空間を簡単に作り出せるため、宇宙飛行士だけでなく、地上管制官や宇宙開発に関わる関係者が、宇宙生活を想定した体験が行える。
DAN DAN DOMEシリーズのARTは、2022年11月1日に発売された白地のテントで、屋外使用に対応したDAN DAN DOMEの耐水モデル「STANDARD」をベースとし、サイズは幅3600×奥行き3600×高さ3085mmで、印刷やペイントにも応じている。インナールーフは、ARTのオプションで、テント内外の突起(リブ)をほぼ無くす内装壁ドームユニットで、プロジェクターによるテント内外への映像投映を実現する。
エントランスパーツは、DAN DAN DOMEシリーズの開口部にはめ込むことで扉として機能するユニットで、開口部の下半分に取り付けると窓になる。スペースユニットは、DAN DAN DOME EXP.STATIONの構築に当たり開発された通路ユニットでDAN DAN DOMEの連結に役立つ。既にART、インナールーフ、エントランスパーツの量産体制は整っており、スペースユニットの量産体制は整備を進めている。
東洋製罐グループは、1917年創業の包装容器メーカーで、売上高は8215億円、約2万人の社員数を誇り、約17カ国/75社の拠点を保有している。同社 イノベーション推進室 三木逸平氏は「ダンボールなどの包装は、食品の運搬や衛生保持に役立つが、使い終わった後、ごみになってしまい、海洋プラスチック問題や気候変動などに悪影響を及ぼすだけでなく、生産する際にCO2も発生してしまう。こういった状況を踏まえて、当社は環境に貢献する取り組みを展開している。この取り組みの一環として、国内で95%以上のリサイクルを誇るダンボールに着目し、DAN DAN DOME EXP.STATIONの開発に踏み切った」と話す。
DAN DAN DOME EXP.STATIONの開発を担当した日本トーカンパッケージは、東洋製罐グループと日本製紙グループホールディングスの出資により2005年10月1日に設立された企業で、ダンボールと紙器の製造、加工、販売などを行っている。同社 包装開発センター/包装技術グループリーダーの一丸欣司氏は、「DAN DAN DOME EXP.STATIONのベースとなっているDAN DAN DOMEは、使用後にダンボール素材にリサイクル可能で、工具を利用せずに折る、つなぐ、結ぶ、貼るといった4つの基本動作で組立られる点や野外でも数カ月使える点が評価され、日本デザイン振興会が主催する2022年度のグッドデザイン賞で入賞している。これまで、キャンプや新入社員研修、スポーツチームのイベント、耐雪試験などで利用されている」と述べた。
DAN DAN DOME EXP.STATIONの開発に協力したフィールドアシスタント 代表で極地建築家の村上祐資氏は、「近年、宇宙開発を行うさまざまな国や企業では、ロケットやステーションといったハードの開発だけでなく、宇宙環境下での生活を深く検証することが求められている。しかし、こういった検証は、専門施設や洞窟などで行われ、多くの時間とコストがかかり、体験できる人も限られていた。そこで、フィールドアシスタントと東洋製罐グループは、宇宙環境下での検証を容易にするために、DAN DAN DOME EXP.STATIONを開発した。DAN DAN DOME EXP.STATIONは、宇宙開発に携わる関係者だけでなく、関心がある企業と団体が多様な検証に利用し、宇宙環境でどう生きるかを考える機会として欲しい。加えて、宇宙環境での失敗に触れ、失敗を洗い出し、失敗を無くして、宇宙環境で生活することにリアリティーを感じてもらいたい」とコメントした。
なお、内閣府が主導し、SPACE FOODSPHEREが代表機関として展開する「宇宙開発利用加速化プログラム(スターダストプログラム)」の一環として開発する「QOLマネジメントシステム」の検証にDAN DAN DOME EXP.STATIONを使用することが決定している。QOLマネジメントシステムは、地上から宇宙などの閉鎖隔離環境にいる集団に食料を供給するシステムで、食品残渣などの廃棄物により作成した液肥を用いた食料生産システムの構築も扱っている。
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