e-POWERの加減速とハンズオフ対応の運動性能で、乗り物酔いしないミニバンに電動化(1/2 ページ)

日産自動車は2022年11月28日、ミニバン「セレナ」をフルモデルチェンジして発表した。ガソリンエンジンモデルを2022年冬から、シリーズハイブリッド「e-POWER」搭載モデルを2023年春に発売する。

» 2022年11月29日 14時30分 公開
[齊藤由希MONOist]

 日産自動車は2022年11月28日、ミニバン「セレナ」をフルモデルチェンジして発表した。ガソリンエンジンモデルを2022年冬から、シリーズハイブリッド「e-POWER」搭載モデルを2023年春に発売する。

 e-POWERでは、これまでセレナに搭載していた排気量1.2l(リットル)の発電用エンジンを、排気量1.4lに変更し、加速性能を高めるとともに8人乗りにも対応した(これまでセレナのe-POWER搭載モデルは7人乗りのみ)。排気量アップにより、発電中のエンジン音も従来と比べて抑制される。また、車両の状態や走行環境、カーナビゲーションシステムの情報などと連携しながらエンジンの作動タイミングを制御するエネルギーマネジメント技術により、乗員が静粛性を実感しやすくしている。

セレナをフルモデルチェンジした[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 e-POWER搭載モデルで新たに設定した最上級グレード「LUXION(ルキシオン)」では、ステアリングから手を離すことができる「プロパイロット2.0」を標準装備にする。

 価格はガソリンエンジンモデルが276万8700〜326万9200円、e-POWER搭載モデルで319万8800〜479万8200円となる。今回発売を発表したモデルはいずれも2WDのみで、4WDのガソリンエンジンモデルの詳細は追って公開するとしている。4WDのe-POWER搭載モデルは、既存のリアモーターを小型化する開発のため、遅れて市場投入される予定だ。

e-POWER専用エンジンを初採用

 新型セレナに搭載するのは、インバーターが小型化してモーターと一体化した第2世代のe-POWERだ。駆動用モーターは先日発売した「エクストレイル」と基本的に共通だ。先代のセレナe-POWERと比較して、エンジンとモーターの両方で出力やトルクをアップさせており、「高速道路で流れに乗れない」などの課題を克服する。

e-POWER専用のエンジンを開発した[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 新型セレナで搭載する発電用エンジン「HR14DDe」は、e-POWER専用に新開発した。日産自動車がe-POWER専用のエンジンを開発するのは初めてだ。これまで、セレナや「ノート」に採用してきた排気量1.2lの3気筒エンジンや、エクストレイルから採用する1.5lの3気筒VCターボエンジンはe-POWER専用ではなく、トランスミッションとも組み合わせていた。

 今後、e-POWERの発電用エンジンのラインアップを、今回開発したHR14DDeと1.5lの3気筒VCターボエンジンの2つにしていくことを検討している。HR14DDeの最高出力=発電量は98ps(72kW)で、セレナが日本の高速道路でもストレスなく走るための発電ができる性能を持たせたという(従来のエンジンは84馬力=62kW)。セレナの体格でアウトバーンの速度に対応するのは苦しいものの、セレナよりも小さなクルマであれば問題なくカバーできる発電量だとしている。

ロングストローク化して排気量を拡大した[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 今回採用する排気量1.4lの3気筒エンジンは、従来の1.2lのエンジンをロングストローク化して排気量を拡大した。エンジンの高さが十数mm増えただけなので、ノートなど従来の1.2lの発電用エンジンを搭載していたモデルでも搭載可能だ。

 発電専用にするに当たって、e-POWER搭載車にはスターターモーターが不要なためスターターモーターを取り付けるための構造をなくして駆動用モーターと接続し、ユニット全体の剛性を高めた。従来はスターターモーターを取り付けるための穴をフタでふさいでいただけだったため振動が起き、剛性の低下要因となっていた。

 また、発電専用のエンジンは、アイドリングや、低速ギアから高回転で回すなどの場面が発生しないため、不要になった部品もある。

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