どれだけ自動化が進んでも現場に残る“ソコカシコ”の極小タスクを遠隔操作で3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2022(1/3 ページ)

ソリッドワークス・ジャパンは2022年11月14日、年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2022」を東京都内で開催した。ユーザー事例講演では、MagnaRecta CTO(最高技術責任者)の加藤大直氏が「ライトタスクなロボットアームの開発と実装」をテーマに、同社が開発を進めている「SocoCacico(ソコカシコ)」の取り組みについて披露した。

» 2022年11月24日 09時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 ソリッドワークス・ジャパンは、3次元設計ソリューション「SOLIDWORKS」の年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2022」を東京都内で開催(会期:2022年11月14日/オンライン配信:同年11月14日〜12月4日)。ユーザー事例講演では、MagnaRecta CTO(最高技術責任者)の加藤大直氏が「ライトタスクなロボットアームの開発と実装」をテーマに、同社が開発を進めている「SocoCacico(ソコカシコ)」の取り組みについて披露した。

 SocoCacicoの名称は“そこかしこ”から由来しており、現場のあちらこちらに、自身の手/足/目/耳の分身となるロボットやカメラ、センサーなどのデバイスを設置し、遠隔操作によって“シンプルかつ軽微な作業のみ”をこなすシステムの総称で、2023年のサービス提供開始に向けて開発が進められている。

MagnaRecta CTOの加藤大直氏 MagnaRecta CTOの加藤大直氏[クリックで拡大]

 加藤氏は講演の中で、SocoCacicoでの利用を想定するロボットアーム(スカラロボット)開発の話題を中心に、開発に至った背景や、3DEXPERIENCEプラットフォームを活用した製品開発のメリットなどを紹介した。

遠隔操作で極小タスクだけをこなすロボットアーム

 MagnaRectaは、SF映画やドラマ、アニメの世界に登場するようなテクノロジーやその考え方、“あったらいいな”といったアイデアに着目し、それらを実現してサービス化することを目指すスタートアップだ。

 冒頭、加藤氏はSocoCacicoについて「従来、人が現場で行っているような超シンプルな作業を遠隔化するものだ。例えば、家にいながら、遠隔でロボットアームを動かし、『ボタンを1つだけ押す』『ワークを右にちょっとだけ動かす』といった“だけ”の極小タスクをこなすことができる」と述べる。

「SocoCacico」のコンセプト 「SocoCacico」のコンセプト[クリックで拡大] 出所:MagnaRecta

 なぜ、SocoCacicoのサービスは、“極小タスクの遠隔化”の実現にフォーカスしているのか。そこには、工場の完全自動化を目標に掲げる企業が直面する理想と現実のギャップともいえる、完全に自動化し切れない部分がどうしても残されてしまうという課題が関係している。

 製造業を中心に、ネットワークにつながる高度な工作機械や産業用ロボット、無人搬送車(AGV)などを活用した“工場の完全自動化”“スマートファクトリー”を理想の工場として思い描いている企業は多い。だが、実際にこうした完全自動化を実現する工場を建てられる可能性があるのは、資金力のある一部の大企業のみであり、工場の規模もそれほど大きいわけでもなく、大企業のような投資が難しい中堅/中小企業では困難といえる。また、新規事業の立ち上げに伴い、一から新工場を建設するようなケースであればまだしも、多くの企業は「既存の工場を何とかしたい」と考えている。そこに対して完全自動化のメスを入れるには、やはり相当の資金と期間が必要になる。

工場の完全自動化を夢見るでも現実は 工場の完全自動化が理想だが、現実は……[クリックで拡大] 出所:MagnaRecta

 ただ、これだけ頑張って工場の完全自動化を目指そうとしても、「現場では人間がどこかで目で見て判断を下していたり、モノをちょっと横に動かすだけなど、ほんのわずかな手作業が発生したりしている。資金力があれば99%自動化できる工場を実現できるかもしれないが、必ずどこかしらには人間の手、人間の判断が介在するはずだ」と指摘する。

 一方で、工場の自動化やスマートファクトリーの文脈の中で、センサーやカメラなどを活用したIoT(モノのインターネット)の取り組みも進んでおり、遠隔監視や見える化を実現する工場が増えている。だが、こうした現状に対しても「IoTの取り組みは、センシングで止まっていることが多く、人間の手で行っているようなタスクを遠隔で実行するようなケースはまだ少ない」と加藤氏は述べる。

センシングで止まっていたIoTのその先を実行するソリューションとして「SocoCacico」の開発を進める センシングで止まっていたIoTのその先を実行するソリューションとして「SocoCacico」の開発を進める[クリックで拡大] 出所:MagnaRecta

 以上のような考えに基づき、同社は、完全自動化を実現するのではなく、現場に必ず存在している人の手や判断を伴うピンポイントのタスク、それも大掛かりなロボットなどでアシストし切れない(わざわざそれをやらない)ような超シンプルなタスクを遠隔化するアプローチを考案。ここからSocoCacicoの開発がスタートした。

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