LumiFreeを採用した「R3-T1」の製品化に取り組むトキ・コーポ―レーションも、液晶技術を使った従来にない照明の開発に大きな手応えを感じている。同社 執行役員 トキスター事業本部 本部長の後藤宏光氏は「これまでも大手メーカーとは異なる“尖った照明器具”を開発してきたが、配光制御で1台何役もこなし、複数連動によるダイナミックな動きも可能にするLumiFreeは大きな力になる」と語る。
これまでの照明器具は、1台の器具で1種類の配光が基本であり、その配光の選択肢もレンズとリフレクターの組み合わせにより限定されるのが一般的だった。「レンズとリフレクターを作るには金型が必要であり、求める配光に対して一から金型を起こすとなると100万円を超えることもある。だからこそ、代表的な3〜4種類のレンズとリフレクターを組み合わせて配光を作るので選択肢はどうしても限定される」(後藤氏)。
また、最新の照明器具では光の大きさを変えられるようになっているが、円形の光であり、楕円形の光は出せない。しかし、LumiFreeを採用するR3-T1は、1台の器具で丸い光と楕円の光を出せるとともに、それらの大きさも自在に変えられる。
例えば、美術館であれば、展示品に対して光が大き過ぎたり少な過ぎたりする光の過不足問題があるが、R3-T1であれば展示品に合わせて光の大きさや形状を変えられる。また、これまでは展示品の入れ替えに合わせて照明を付け替えるために、美術館では多数の照明器具を在庫しておく必要があったが、R3-T1を使えば照明の付け替えや在庫も不要になる。後藤氏は「照明器具メーカーとしては、商品がたくさん売れるほうが都合がいいかもしれないが、これからの時代はそのようなビジネスモデルは持続可能とはいえない。LumiFreeで1台で何役もこなす高付加価値の製品を実現することで対応していきたい」と説明する。
会見では、照明器具によるライトアップが重要な役割を果たす結婚式のバージンロードのカーペットを模したデモを披露。R3-T1が自在に光の形状を変えられるので、新婦と父親の入場シーンや新郎新婦の退場シーンなどを、光によって演出できることを示した。
R3-T1は屋内用で、配光角度は10〜50度、演色性はRa90以上で十分な明るさを確保している。配光などの制御はタブレット端末などのアプリで行う予定で、端末1台当たりの制御台数は最大30台を想定。R3-T1におけるLumiFreeとしては、配光制御を行う液晶パネルだけでなく、照明器具向けの通信規格による連携なども可能な制御ユニットも提供される。
なお、R3-T1は、1台当たり税込み10万円以内を価格目標に開発を進めているという。
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