ジャパンディスプレイ(JDI)は2019年11月28日、次世代ディスプレイとして有力視されているマイクロLEDディスプレイを開発し、1.6インチサイズの試作品を製造したと発表した。
ジャパンディスプレイ(JDI)は2019年11月28日、次世代ディスプレイとして有力視されているマイクロLEDディスプレイを開発し、1.6インチサイズの試作品を製造したと発表した。従来ディスプレイ技術と比較して、高輝度、広視野角といった表示性能や高信頼性を持つことが特徴。車載や屋外設置用途などに向けた中小型ディスプレイとして量産展開を進める。
マイクロLEDディスプレイとは、バックプレーン(回路基板)上にμmサイズの赤、緑、青色LEDチップを敷き詰めたディスプレイ方式。バックライトや偏光板、カラーフィルターなどが必要な液晶ディスプレイと異なり、マイクロLEDディスプレイはLEDチップの自発光で駆動する。そのため、太陽光下においてもはっきりと視認できる高輝度と、周囲どこから見ても同じように画像を表示する広い視野角を持つ。
また、同じく自発光型である有機ELディスプレイと比較しても、部材が無機材料であるため環境変化に強いことや、封止層が不要で構造もシンプルであることがメリットとなる。
JDIは得意とするLTPS(低温ポリシリコン)バックプレーン技術を生かし、米国ベンチャー企業のgloが開発するマイクロLEDチップを搭載したマイクロLEDディスプレイの試作品を開発した。gloはGaN(窒化ガリウム)ベースのRGBマイクロLEDチップ技術、およびウエハーからのダイレクトトランスファー技術などに強みを持つ。
試作品のサイズは1.6インチで、画素数は300×RGB×300、精細度は265ppi。LTPSバックプレーン上につくられたマイクロLEDディスプレイの中では最も高精細だという。輝度は3000cd/m2と、従来の液晶ディスプレイと比べて10倍程度の値になる。視野角は178度以上だ。実際に試作品のデモを見ると、まばゆいほどの映像が表示されており、ほぼ真横からディスプレイをのぞき込んでも鮮明な画像が視認できた。コントラスト比も有機ELディスプレイより優れるという。
マイクロLEDチップの具体的な寸法は明らかにしなかった。1.6インチの試作品では27万個のマイクロLEDチップがバックプレーンにボンディングされているという。JDIでは同技術で最大10インチのディスプレイを生産する方針で、「場合によってはタイリングを用いて中型まで手掛けるかもしれない」(ジャパンディスプレイ R&D本部 山田一幸氏)としている。デジタルサイネージなどで用いられる大型ディスプレイには現時点で適用しない見込みだ。
量産時期は現時点で未定とし、「量産に向かって生産性をどのように高めるか、まだ改善点はあるので開発を進める。早期に量産へ持っていきたい」(山田氏)。また、生産は国内の液晶パネル工場を転用する考えだ。量産に向けた投資については、既存工場の活用とシンプルなディスプレイ構造によって「従来の液晶パネルと比べればかなり抑えられるのではないか」とした。
その他、12.3インチの透明液晶ディスプレイも同時に発表された。同社は2017年2月にも4インチの透明液晶ディスプレイを発表していたが、大型化および透過率の向上を実現した。透過率は「世界トップクラス」(JDI)の87%(オフ時)で、透けた背景の歪みも少ないという。また、ディスプレイの表面だけでなく裏面からも画像が視認できる。
画素数は1440×540で、精細度は125ppi。中心輝度は150cd/m2で、コントラスト比は30:1。色数は4096と少なめだが、「映画を見るなど諧調表現が重要な求められるアプリケーションでは用いないため」(JDI)とする。AR(拡張現実)や交通機関の窓など新たなアプリケーションの提案を進める考えだ。
マイクロLEDディスプレイおよび透明液晶ディスプレイは、試作品を「ファインテック ジャパン2019」(2019年12月4〜6日、幕張メッセ)に参考出展する。
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