ジャパンディスプレイ(JDI)が、液晶技術を用いて照明の配光特性を制御可能とする「世界初」(同社)の技術「LumiFree」を開発。照明器具を手掛けるトキ・コーポレーションがLumiFreeを採用した可変配光スポットライト「R3-T1」の製品化を進めており2023年4月の量産を計画している。
ジャパンディスプレイ(JDI)は2022年10月31日、東京都内で会見を開き、液晶技術を用いて照明の配光特性を制御可能とする「世界初」(同社)の技術「LumiFree」を開発したと発表した。同年9月から国内向けのサンプル出荷を始めるとともに、照明器具を手掛けるトキ・コーポレーションがLumiFreeを採用した可変配光スポットライト「R3-T1」の製品化を進めており2023年4月の量産を計画している。LumiFreeの事業目標としては、2026年度に年間売上高100億円以上を掲げる。
JDIが2022年6月に発表した成長戦略「METAGROWTH 2026」では、“世界初、世界一”の独自技術に基づく6つの成長ドライバーを設定しており、これらのうち5つは具体的な製品や事業になっていた。そして6つ目の成長ドライバーとした「新技術・新商品・新事業」の中で、今回初めて具体化したのがLumiFreeになる。JDI 代表執行役会長 CEOのスコット・キャロン氏は「LumiFreeは、これまで難しかった照明の配光を自由に制御できるようになる技術だ。固定電話だけだった時代に携帯電話が登場したレベルの発明だと自負している」と意気込む。
LumiFreeは、JDIが長年培ってきたバックライトの光を画素ごとに制御して映像を表示する液晶ディスプレイパネルの技術を基に開発した、照明に用いられているLED光源の配光特性を制御する技術である。これまでのLED照明は、明るさや色味を制御することは可能だったが、光の広がり方である配光はレンズやリフレクターなどの光学部品によってあらかじめ作り込んだものに固定されるため、自由に制御できないのが一般的だった。
LumiFreeでは、LED光源の光を縦と横の2軸で微細かつ瞬時に制御できることを特徴としている。会見で披露したR3-T1の試作品では、縦方向と横方向それぞれ100段階で光の大きさを制御できるため、投影光の形状を正円だけでなく縦長や横長の楕円形にできるとともに、その形状は1万種類から選択することが可能だ。配光制御を可能にする液晶パネルは、光を偏光させる液晶材料と、この液晶材料を駆動するバックプレーン技術を新たに開発することで完成させた。
また、今回のLumiFreeの開発は、キャロン氏が主導してきたJDIの経営改革の成果にもなっている。LumiFreeの技術そのものはJDI社内で検討されてきたものだが、オープンイノベーションの枠組みでトキ・コーポレーションとの接点が生まれたのが2020年10月ごろになる。そこから1年間の共同開発を経て手応えを得て、2021年10月には3人から成る社内ベンチャー組織により事業化に取り組み、約1年間での短期立ち上げにつなげた。「同様の社内ベンチャー組織が複数あり、今後もLumiFreeと同様に短期で立ち上げていきたい」(キャロン氏)という。
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