ジャパンディスプレイが事業戦略発表会「JDI Future Trip〜First 100 Days〜」を開催。同社 常務執行役員 CMOの伊藤嘉明氏は、同氏が中心になり、社内公募によって2018年4月に発足させたマーケティング・イノベーションを推進する組織体による約100日間の成果を紹介するなど、イノベーションにより厳しい現状を打開する方針を打ち出した。
長らく厳しい経営環境にあるジャパンディスプレイ(JDI)。シャープを除いた、ほぼ全ての国内大手電機メーカーの中小型液晶ディスプレイパネル事業を1社に統合したといっても過言ではない同社だが、韓国、台湾、中国勢に対して優位な状況にあるとはいえない。赤字も続いており、大株主である産業革新機構の支援もこれ以上続けるのは難しい状況だ。
そんなJDIが2018年8月1日、東京都内において事業戦略発表会「JDI Future Trip〜First 100 Days〜」を開催した。登壇したのは、常務執行役員 CMO(チーフマーケティングオフィサー)の伊藤嘉明氏である。伊藤氏は、2017年8月の入社以来、JDIの中でイノベーションを生み出すべくさまざまな活動を進めてきた※)。今回発表したのは、伊藤氏が中心となり、社内公募によって2018年4月に発足させたマーケティング・イノベーションを推進する組織体による約100日間の成果となる。発表会の副題である「First 100 Days」はこのことを指している。
※)関連記事:JDIがカンパニー制でスピード経営目指す、CMOに元アクア社長の伊藤嘉明氏が就任
伊藤氏はまず、JDIのDNAについて言及。ディスプレイパネルメーカーとして、ソニーの「新しい機能を実現するシステム技術」、東芝の「高精細をけん引する半導体製造技術」、日立製作所の「美しい映像を支える光学・材料技術」を受け継ぎつつも、現在は「本来の力を出し切れていない」(同氏)とした。
そして、解決すべき経営課題として「経営資源の見直し」「グローバル競争への対応」「事業ポートフォリオの再編」の3つを挙げた。これらの課題に対してJDI 会長兼CEOの東入来信博氏は「構造改革と財務体質改革の断行」「カンパニー制への移行」「クロスファンクショナルチーム導入」という施策を進めているが「まだ納得の行く結果は出ていない」(伊藤氏)。
このように厳しい現状を認めた上で、伊藤氏は2017年10月のCMO就任発表時に挙げた3つの指針である「“第二の創業”を担うスピード改革」「モノづくりだけでなはないコトづくり」「顔の見える企業コミュニケーション」を挙げた。そして「クロスファンクショナルチーム導入」をベースに、マーケティング、イノベーション、そして広く広報を行うコミュニケーションを担う新たな組織を、2018年4月に社内公募で立ち上げた。
この新組織で提案したのが、新生JDIに向けた理念体形の刷新だ。これまでは見るためのデバイスだったディスプレイに対して、「見聞き、触れ合え、香り、味わえる」というコンセプトを導入する。「その時、ディスプレイはインタフェースに変わる」(伊藤氏)という。
そして、イノベーション戦略として「最終製品ビジネスへの参入」「定期課金ビジネスへの参入」「テクノロジーで社会的課題を解決」という3本の柱を打ち出した。ここで解決すべき社会的課題についても、さまざまある中から「高齢者介護」「少子高齢化」「個人情報漏えい」の3点に絞り込でいる。
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