東北大学は、ハイドロゲルを基材とする有機物のみで構成された神経刺激電極「巻き付く電極」を開発した。動物実験で、迷走神経繊維に柔らかく巻き付いて密着固定を維持し、刺激有効性を有することを確認した。
東北大学は2022年10月6日、ハイドロゲルを基材とする有機物のみで構成された、神経刺激電極「巻き付く電極(カフ型電極)」を開発したと発表した。ブタを用いた実験で、迷走神経繊維に柔らかく巻き付いて密着固定を維持し、刺激有効性を有することを確認している。
カフ型電極は、独自開発した伸縮性のある導電性ポリウレタン(PEDOT-PU)を2枚のPVAハイドロゲルフィルムで挟んだ構造をしている。挟む際にフィルムを引き伸ばしておくことで、神経への接着後に管状へと変形して自然に巻き付く。
直径2mmの棒を用いて巻き付きによる固定力を評価したところ、横滑りと剥がしの双方で電極の自重を十分に超える固定力を示した。圧迫力は、神経に障害が生じ得る圧力1.3kPaより十分に小さい200Pa程度だった。
ブタの迷走神経にカフ型電極を取り付けた実験では、刺激(10mA、0.5ミリ秒幅、30Hz)による心拍数低下が認められ、適切に迷走神経を刺激できていることが確認された。
開発したカフ型電極は、金属を使用していないため、MRIにも対応可能だ。また、感覚神経や運動神経、筋組織への刺激など、電気刺激療法全般への応用が期待される。
てんかん発作やうつ病などの治療では、体内に埋め込んだ電極から迷走神経への刺激が有用だ。従来の埋め込み型デバイスは、白金などの金属を使用しており、脳組織など柔らかい組織とは弾性が異なるため、神経束への安全な密着維持が困難だった。
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