―― パナソニックグループにとってYohanaの意味をどう考えるのか。
楠見氏 家庭の在り方が変わる中で各個人がやるべきことがたくさんありすぎているのが今の状態だ。さまざまな要求が非常に多く複雑になっている。パナソニックグループとして、くらしのウェルビーイングを提供していく中で従来はハードウェアを中心に解決策を示してきたが、今後はハードウェアだけでない形が必要だ。Yohanaでの取り組みはそういう面で新たな価値をもたらしてくれる。
Yohanaは、北米でスタートを切ったばかりで、まだ、販売目標をどうするかという段階ではない。ただ、競争力を高めていくことが重要だ。ユーザーの期待を上回るサポートができたり、情報を提供できたりしてはじめて価値が認められ、事業として成長できるようになると考えている。
また、Yohanaを事業会社傘下ではなく、パナソニック ホールディングスの直轄で行うようにしたのは、既存の事業とのしがらみなしに、スピード感を持って進めることが重要だと考えたためだ。進めていく中で、ハードウェアへのフィードバックなど連携できる部分が出てくれば随時対応することを考えている。
―― パナソニックグループとしてのシナジーとしてどういうことが考えられるのか。
楠見氏 今はまだ夢物語だが、Yohanaにより家族の状況が分かればその家族を支える中でより早く困りごとが何かを特定できるようになる。特定できればそういうセンシングを家電で行うことも可能かもしれない。Yohanaのソフトウェアプラットフォームをベースに家電と連携することも考えられる。電材とかとの連携なども可能性はある。まだ議論は社内でもこれからだが、そうした世界が広げられればよいと考えている。
―― 事業面との連携とともに人材交流の面も重視するのか。
楠見氏 その狙いはある。技術もプロセスも学んでいく。新たな原動力になると考えている。
松岡氏 今のところ、パナソニックグループからYohanaに出向で来ていただいている人は60人を超えるくらいだ。実際にソフトウェアのバグ出しなど業務プロセスに入ってもらって、一緒に製品を作るプロセスを体感してもらっている。2週間程度から3カ月に及ぶ場合などさまざまなケースがある。
―― 海外の企業で要職を務めてきた松岡氏だが、パナソニックに入って感じたことはあるか。
松岡氏 日本企業に入るのは初めてで多少の不安があった。しかし、入ってみて何カ月後かに感じたのは、大企業が困っていることは世界中で同じだということだ。組織が大きくなりすぎて混乱していることはどこも共通だ。組織間で争いがあることはGoogleやAppleでもあったことで、こうした状況を切り抜けてきた成功体験も持っている。パナソニックだから大きな違いがあるかというとそうでもない。
逆にパナソニックの不思議な点は、ウェルビーイングを重視するミッションが当たり前のように浸透しているところだ。多くの米国企業はテクノロジーファーストである点が多く、ウェルビーイングを真剣に考えているところは少ない。そういう点でもパナソニックの素晴らしい点があると考えている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.