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» 2022年07月23日 10時00分 公開

中国車もEVも最新エンジンのHEVも、みんな違ってみんないい自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)

週末ですね。月曜日の祝日を満喫した方も、月曜日からフル稼働だった方も、1週間お疲れさまでした。今週も電動車に関する話題が多かったですね。

[齊藤由希,MONOist]

 週末ですね。月曜日の祝日を満喫した方も、月曜日からフル稼働だった方も、1週間お疲れさまでした。今週も電動車に関する話題が多かったですね。

 多くの人が注目したのは、BYD(比亜迪)が乗用車タイプのEV(電気自動車)で日本に参入するというニュースではないでしょうか。BYDジャパンの経営陣が2カ月前の記者会見で「日本に乗用車は導入しない」という趣旨の発言をしていたところだったので、発表会の案内が来たときにはとても驚きました。2カ月の議論で方針転換を図ったのだとすれば、とてもフットワークが軽いですよね。

 乗用車での日本参入と同じくらい驚いたのは、2025年までに販売店を全国に100カ所設ける、というBYDジャパンの計画です。クルマの実物を見て検討し、メンテナンスで任せられる実店舗が各地に必要だという判断が背景にあります。

 BYDジャパンのプレゼンテーション資料には、「ディーラー」と聞いて誰もがイメージするような建物のCGイラストがありました。営業がいて、メカニックがいて、展示車があって……というディーラーを100店舗、成立させるのであれば、各店舗でそれなりの売り上げ規模が必要になるでしょう。そうなったときには、輸入自動車特別取扱制度(PHP)ではなく、型式指定制度で認可を受けることも重要です。

 2025年まであと3年、日本への乗用車導入の方針を転換したように、軽々としたフットワークで“日本のクルマの売り方”を整えていくのかもしれません。

ドイツ車オーナーがBYDのクルマに乗ってみた印象

 BYDジャパンが最初に日本で発売するEVは中型SUV「ATTO3」です。発売予定は2023年1月ですが、一足先に試乗してきました。運転したのは、日本に先行して発売したオーストラリア仕様の右ハンドル車です。10分ほどお台場を走る短い試乗なので細かい分析はできませんが、街乗りで使う分には、加減速にも取り回しにも特に違和感や気になるところはなく、誰にでも運転しやすいクルマだという印象でした。

 私が普段運転するクルマは、足が硬くハンドルも重い典型的なドイツ車なので、ドイツ車と比べて違うなあ、と思うところはありました。まず気付いたのは、ペダルが愛車よりも右寄りについているところでした。また、アクセルペダルやブレーキペダルを踏むたびにペダル自体がやや頼りなく感じることもありましたが、それはBYDが未熟だというのではなく、ドイツ車のペダルが高剛性なので違いを感じたというだけの話です。ステアリングは重くありませんが、かといって必要以上に軽いこともなく自然な感触でした。

 ドイツ車によくあるような、どっしり、ゴツゴツ、ガッチリ、しっとりした運転の感触が好きな人は、ATTO3を物足りなく感じるかもしれません。裏を返せば、比較的軽快に走るといえるでしょう。「みんな違って、みんないい」とはよく言ったもので、ドイツ車とBYDのどちらが優れているかという話ではありません。

 10分間のチョイ乗りではATTO3は悪くないクルマでした。どこの国のクルマかと聞かれて分かるほどのクセもなくプレーンだと感じました。ドイツ車らしさが好きではない人や、軽い感触で運転できることを好む人も多いと思うので、このプレーンさがいいという人は確実にいるでしょう。

日本導入第1段となるATTO3(左)。ATTO3の後ろには「Build Your Dreams」と書かれていて個人的には気に入っています(右)[クリックで拡大]

 ただ、クルマは安い買い物ではありません。これを買うぞという確固たる決め手が必要です。価格、運転した感覚、自動車メーカーのブランドイメージ、販売店の応対、クルマの見た目、リセールバリュー、思い入れなど人それぞれあるのではないでしょうか。他の人が乗っていない珍しいクルマがいい、という基準の人もいますね。

 「悪くないクルマ」という水準であれば、日本にはどのセグメントにも十分な選択肢があります。また、BYDジャパンのトップは「EVを買うか買わないかではない、いつ買うかだ」とプレゼンテーションで語りましたが、今EVを買わなければならない理由は、日本にはあまりありません。BYDジャパンが日本で乗用車を一般向けにPRするのはこれからなので何とも言えませんが、BYDの魅力をどんな風に打ち出し、どんなところが購入の決め手になっていくのか、反応が楽しみです。

 EV全般でいえば、補助金で費用を抑えられることが購入の後押しになることは明らかですよね。しかし、価格だけを武器にした新型車で、販売店100店舗が成り立つほどの販売になるでしょうか。また、BYDが日本に導入するモデルについて中国での価格を見てみると、既存の自動車メーカーのブランドが色あせるほどの圧倒的な価格競争力とは思えませんでした。それとも、WLTCモードでの数十kmの走行距離の違いは購入の決め手になりますか?

 「中国車なんか売れない!」と決めつけるつもりは全くありません。人々が何に着目して検討するのか、そして購入に至るのか、動きが楽しみです。出てきた新型車だけをみて、どの自動車メーカーが優れていて遅れているかを断じることはできません。クルマは売れてナンボ、売れるクルマのために工場が稼働してナンボですから。

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