新型エクストレイルに搭載するVCターボエンジンは、スポーティーさも重視してインフィニティブランドで搭載している排気量2.0lの直列4気筒のタイプとは異なり、e-POWERモデルと非ハイブリッドのエンジン車の両方に搭載することを前提としている。定常運転が基本の発電専用エンジンであれば本来はターボや可変圧縮機構は不要だが、MT文化が根強い欧州でe-POWERが受け入れられることを目指してVCターボエンジンの採用を決めた。
これまでe-POWERについて寄せられてきた意見の中には、運転操作と関係なくエンジンが始動することへの違和感や、加速とエンジンの回転数が一致しないことへの不自然さを指摘する声があった。こうした点は欧州では特に嫌われるため、克服に力を入れた。
新型エクストレイルで発電専用に使うVCターボエンジンは、マルチリンク機構とアクチュエーターによって圧縮比を14から8まで状況に応じて変えることができ、排気量としては1.5〜2.8lに相当する。
常用域では高圧縮比で、燃焼室の容積を最小にして効率よく発電する。およそ時速30kmまでは1600rpm、時速80〜90kmまでは2000rpmとし、それ以上の速度域ではさらに回転数を上げる。発電専用でタイヤの駆動力には直結していないが、車速が上がるのに合わせてエンジン回転数を上げる演出により気持ちのよい加速感を生み出す。
フル加速時は低圧縮比になり、燃焼室の容積を最大にしてエンジンを動かす。比較的低い回転域でパワーが出せるため、可変圧縮比ではない通常のエンジンと比べて回転数を抑えて静粛性を確保しながら大トルクを生み出せる。なお、インフィニティブランドで搭載しているVCターボエンジンは、直列4気筒でありながらV型6気筒並みの低振動を実現している。
e-POWERの駆動用バッテリーの容量が大きくないことを考えると、アウトバーンでの高速走行でモーターを回し続けるには発電機に大トルクが必要だった。また、回転数を低くできる点は、ドライバーがアクセルを踏み、速度が出るのに合わせてエンジン回転数を上げる余裕をつくるところにも生きている。
エンジンの回転数を抑えるだけでなく、エンジンの作動頻度低減や遮音も静粛性向上に貢献した。路面検知によって、ロードノイズが発生しやすい荒れた路面で発電するなどの制御技術や、エネルギーマネジメントの最適化によって、競合他社の同セグメントのハイブリッド車(HEV)と比べてエンジン作動頻度を3分の1に低減したという。
2020年までの10年間で、中型以上のSUVのユーザーを年齢層でみると40代以上の比率が9ポイント増加して75%まで拡大した。購入価格帯では、350万〜450万円の比率が41ポイント増の56%に増加しており、2010年時点で過半数を占めていた300万円以下の比率は2020年には3%まで低下している。
こうした状況において、SUVに対する期待値や先進装備に対するニーズが高まっているという。また、乗り心地や運転しやすさ、内装の質感、悪路や雪道の走破性などの項目は、重視されているものの満足度が比較的低いということが明らかになっている。そこで新型エクストレイルではアウトドアに似合うタフさと上質感の両立を目指した。
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