富士通は2022年1月に、国内電波法に準拠する安価な79GHz帯ミリ波センサーを開発している。同年2月には、前身となる技術を用いて、鳥取県鳥取市が富士通Japanとともに市営住宅の一人暮らし高齢者を見守る実証実験を実施しており、プライバシーに配慮した住民の状況監視におけるミリ波センサー技術の有効性を確認した。さらに6月には、神奈川県川崎市とともに、福祉製品やサービスの開発、改良を支援する施設「Kawasaki Welfare Technology Lab(通称:ウェルテック)」内の模擬環境ラボで、起床をはじめとするさまざまな動作時の機器の反応や通知内容などの検証も行った。これらの結果を踏まえて、8月以降に実際の高齢者施設における実証実験を行う予定である。
なお、開発技術のシステムは、病院や介護施設などの各部屋に設置したミリ波センサーのデータをネットワークを介して収集し、ナースセンターなどに置くサーバに組み込んだ姿勢推定AIモデルとActlyzerによって集中管理することで、見守りを行うイメージだ。AI処理にGPUは不要であり、クラウドも必要としない。また、ミリ波センサーによる姿勢推定は、センサーの前に2〜3人の人がいても一定の精度で行えるので、例えば看護師や介護士、面会者が部屋にいる状態だと利用できないといった制限はない。
今回発表したミリ波センサーの技術は、富士通が注力している最先端デジタル技術と人文社会科学を融合した「コンバージングテクロジー」の一環となる。
人と社会にフォーカスするコンバージングテクロジーは、「ヒューマンセンシング」「ヒューマンエンハンスメント」「ソーシャルデジタルツイン」「ソーシャルデザイン」「生体認証技術」から構成される。中でも、映像処理と行動科学の知見を融合し、人の行動を高精度に分析する「ヒューマンセンシング」では、イオンリテールのAIカメラシステムや、東洋大学、尼崎市と共同で取り組んだ特殊詐欺を未然に防ぐ共同研究などの事例がある。
Actlyzerはこのヒューマンセンシングに基づき、映像データへの適用を想定して開発された技術だ。今回は、安価なミリ波センサーの点群データからでも高精度に姿勢を推定できるようになったことで、Actlyzerを横展開できるようになった。
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