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» 2022年05月26日 07時00分 公開

タンパク質の構造解析をAWSでクラウド化、膨大な計算も約7倍高速に製造IT導入事例(1/2 ページ)

アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS)は2022年5月25日、高エネルギー加速器研究機構(KEK)とAWSのサービスを活用して構築した、タンパク質の構造解析を行うためのクラウドプラットフォーム「GoToCloud」についての説明会を開催した。さらに、AWSとKEKの間で、「GoToCloud」の今後の展開を見据えた連携強化を図っていくと発表した。

[池谷翼,MONOist]

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS)は2022年5月25日、高エネルギー加速器研究機構(KEK)とAWSのサービスを活用して構築した、タンパク質の構造解析を行うためのクラウドプラットフォーム「GoToCloud」について説明会を開催した。さらに、AWSとKEKの間で、「GoToCloud」の今後の展開を見据えた連携強化を進めると発表した。

画像データ解析の計算量が課題に

 GoToCloudはタンパク質粒子の2D画像から立体構造を決定するデータ解析計算などを、AWSのサービス群で構築したクラウドプラットフォームだ。クラウドのハイパフォーマンスコンピューティング環境である「AWS ParallelCluster」、高速処理用ストレージ「Amazon FSx for Lustre」、大容量データ保管用ストレージ「Amazon S3」などを活用している。

 創薬研究においては以前から、タンパク質などの立体構造に基づく薬物の設計(SBDD:Structure Based Drug Design)が有力な手法として活用されてきた。特定のタンパク質について、働きを不活性化し得る化合物の複合体構造を選定する構造スクリーニングを行う。ただ、該当する化合物をピンポイントで作ることは難しく、候補となり得る化合物を大量に生成して、1つずつ調べていく。

SBDDの概要[クリックして拡大] 出所:AWS、KEK

 こうしたタンパク質の構造解析プロセスで注目を集めるのが、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析の手法である。同手法は、生成したタンパク質をクライオ電子顕微鏡で2D画像として撮影し、それらを統合化することでタンパク質の立体構造を得るというものだ。従来主流であった手法と異なり、タンパク質の結晶を作ることなく構造決定を可能にするというメリットがある。現在、クライオ電子顕微鏡は国内では現在合計で30台以上が稼働している。KEKでは2018年度にクライオ電子顕微鏡の研究機関や企業との外部共用を開始しており、年間で50グループが利用するという。

クライオ電子顕微鏡による単粒子解析について[クリックして拡大] 出所:AWS、KEK

 しかし同手法には、画像データ解析の計算量が膨大になるという課題がある。KEK 物質構造科学研究所 教授の千田俊哉氏は「国内で最高速度の電子顕微鏡を用いても、1日当たり10〜20セットのデータしか集まらない。そこから構造決定を行うと、オンプレミスのGPUボックスを用いた場合、1つのデータを処理するのに1週間から2週間程度かかる。本来であれば年間で200セット程度の処理を行いたいのだが、これではデータを取るだけで精いっぱいになる」と説明する。

構造スクリーニングでは解析が大きな課題となる[クリックして拡大] 出所:AWS、KEK

 対策としてはGPUボックスを増設するという手段がある。ただ、マシンが増えるとトラブルが発生しやすく、メンテナンスの手間もかかる。クライオ電子顕微鏡を利用するユーザー対応も困難で、安定稼働を実現することが難しい。

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