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» 2022年05月25日 08時00分 公開

量子産業の創出加速で「国内1000万人の利用目指す」、活動の幅広げるQ-STAR量子コンピュータ

量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)は2022年5月23日、同日開催のシンポジウムで、「一般社団法人 量子技術による新産業創出協議会」として社団法人化することを発表した。シンポジウムでは、Q-STARの活動報告と今後の取り組みについても説明が行われた。

[池谷翼,MONOist]

 量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)は2022年5月23日、同日開催のシンポジウムで、「一般社団法人 量子技術による新産業創出協議会」として社団法人化することを発表した。シンポジウムでは、Q-STARの活動報告と今後の取り組みについても説明が行われた。

量子産業のサプライチェーン可視化に取り組む

 Q-STARは2021年9月1日に、量子産業の創出を目指して発足した組織である。設立当初の会員法人は24社だったが、現在では59社が参加している。「量子波動・量子確率論応用部会」「量子重ね合わせ応用部会」「最適化・組合せ問題に関する部会」「量子暗号・量子通信部会」という4つの部会が設置されており、各部会での議論をベースに政策提言を行う他、ユースケース創出に向けた他団体や企業、研究機関との量子技術のテストベット連携、研究開発連携、技術開発のロードマップ策定といった活動を進める。

 今回の社団法人化を通じて、団体として活動の幅をより広げて、量子関連の産業や新技術の創出加速を目指す。Q-STAR 実行委員長の岡田俊輔氏は「設立当初の参加企業に加えて、現在ではベンダー企業だけでなく、ユーザー企業も積極的に関与してくれるようになった。量子技術はまだ産声を上げたばかりで、産業界に羽ばたいていく取り組みが必要だ。今後は、(参加企業間で)さらに多くのディスカッションができるようにしたい」と語った。

 岡田氏は2021年度の成果について、まず量子技術の産業化リファレンスアーキテクチャモデルを表す「QRAMI」の展開を取り上げた。QRAMIは量子産業のバリューチェーン全体をレイヤー別に分け、図として視覚化したものである。新興市場である量子産業において、共通言語としての役割を担うことが期待されているという。岡田氏は「QRAMIは海外の関連団体や国内他団体とのコミュニケーションでも、議論を支えるスタンダードなモデルとして活用される流れが生じている」と説明した。

 また、各国の関連団体と密な関係を構築し、ワークショップを重ねて開催している点なども実績として紹介した。量子コンピュータの産業利用を目指すドイツのQUTAC(Quantum Technology and Application Consortium)、欧州のQuIC(European Quantum Industry Consortium)、米国のQED-C(Quantum Economic Development Consortium)、韓国の「未来量子融合フォーラム」などとリーダー会議を実施している。量子産業のサプライチェーン可視化などに取り組んでおり、2022年度後半にはその成果が公開可能になるという。岡田氏は「国際的活動の中で統合的なシンポジウムを実現して、量子産業における日本の相対的地位向上を目指す」とも語った。

 併せて、知的財産や輸出管理に関する法律、技術の標準化に関する議論も進めている。「QED-Cではこうした議論の枠組みが既にできている。こうした動きを見習いたい」(岡田氏)。

 この他、量子産業の出口戦略として求められるものについての議論も進めてきた。日本国内では1000万人程度が量子技術を活用できる環境づくりを進めるとともに、実現に向けて、量子技術に関連するユニコーン企業を輩出しやすい文化づくりも進めるとした。Q-STAR参加企業による量子技術のグローバル化も推進する。

センシングデバイスやマテリアルの部会も必要に

 岡田氏は2022年度の主な活動方針として、4点を取り挙げた。1つ目は、量子技術を意識せずとも使用できる社会構築を目指すことである。岡田氏は「国内1000万人の量子技術利用を目指し、具体的に何ができるのかを検討する。ユースケース創出のため、技術の社会実装を目指す研究開発を促進する。今の部会以外に、センシングデバイスやマテリアルの部会も必要になる。ユーザー企業主体の部会ができればありがたい」とコメントした。

 2つ目は量子技術の産業転換の加速だ。Q-STARの参加企業が持つ技術の社会実装を進める。3つ目は量子技術のグローバル化を挙げた。Q-STARの活動とリンクさせつつ、QRAMIがグローバルな議論のベースになるよう取り組むとした。

 4つ目は一般社団法人としての責任ある活動の推進である。岡田氏は「2021年度までの反省を生かし、産官学で一体化した取り組みを実行していきたい」と語った。

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