EHDSは、高いレベルのプライバシーやサイバーセキュリティの要求事項を順守したプラットフォーム環境上で、個人の健康データを1次利用のために標準化、集約化することが、研究やイノベーション、政策決定のために2次利用できる前提条件だとしている。図3は、電子健康記録(EHR)の1次利用と2次利用の関係を示したものである。
電子健康データの1次利用を通して、各国およびEU域内レベルの医療が改善されるが、そのデータは、通常、電子健康記録に保存され、患者の診療歴のセグメントが含まれている。EHDSは、市民が自分の保健データにアクセスして、国外にいる時でも医療専門職の言語に関係なく、選択した医療専門職によるデータ利用を可能にするものであり、医療ミスを減らしながら診断や治療を改善させて、不必要な診断を回避することができるとしている。
そして、EHDSは、以下の3つの保健データ1次利用向け製品市場を統合するものであるとしている。
ソリューション領域別にみると、EHDSは、「欧州がん撲滅計画」(関連情報)や「ホライズン・ヨーロッパがんミッション」(関連情報)で培われてきた研究やエビデンスをベースに、がん患者にベネフィットをもたらすイノベーションの開発・実用化を支援し、リアルタイム性のあるがん登録制度を可能にするとしている。
また、遠隔医療の領域では、仮想医療相談やトレーニング、継続教育を提供するとともに、「欧州レファレンスネットワーク(ERNs)」(関連情報)で構築した診断や治療に関する専門的知見の収集・蓄積を支援したり、がん検査や治療をより効果的でアクセス可能なものにしたりするとしている。医薬品の領域では、保健データ利用により、新たな治療法や医薬品の開発を促進し、「欧州医薬品戦略」(関連情報)の目標や「欧州保健緊急事態準備・対応局(HERA)」(関連情報)の責務の達成に寄与するとしている。
さらに医療機器の領域では、医療機器規則(MDR)(関連情報)および体外診断用医療機器規則(IVDR)(関連情報)に準拠した医療機器ソフトウェアについて、製造業者が、電子健康記録システムの自己認証スキームで導入された相互運用性の要求事項順守に関する長期的な適格性評価を認識するとしている。
このような点を踏まえた上で、EHDSは、図4に示す通り、保健データ2次利用によるユーザーのベネフィットを、ステークホルダーごとに整理している。
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