1つ目は、空気圧縮機によって生じた熱を冷やす冷却塔の廃熱利用だ。もともと空気圧縮機と冷却塔の間を行き来していた冷却水の循環経路と、ウエハ洗浄用の純水の経路の間に新たな熱交換器を設置し、空気圧縮機で暖められた35℃の冷却水をこの熱交換により27℃に下げる。その分ウエハ洗浄用の純水の温度を10℃から13℃まで上げることに成功し、それぞれのエネルギー消費を抑えることに成功したという。
2つ目は、ヒートポンプを活用した加温システムの効率化だ。幸田製作所のヒートポンプシステムでは、水槽が大きく加温効率が悪い一方で設備間の距離が長く送水中に水温が低下する課題があったが、これを送る分のみ温める形でヒートポンプシステムの配置を見直すことで無駄な加温を抑えることに成功した。またヒートポンプの効果を最大化する冷媒の選定も新たに行うことで、効率的な熱交換を行えるようになったという。これにより、純水の温度を4℃上昇させ、加温蒸気量を25%削減することに成功したという。さらに、冷水電力についても9%低減できたとしている。
3つ目は、製作所内で発生する蒸気ドレン廃熱を再利用する仕組みだ。従来は幸田製作所内の蒸気の活用は、7割は回収され再利用されてきたが、3割は高温の液体として排水されてきた。必要な蒸気量が不足した時のみボイラーの追加運転により、追加蒸気として活用していたが、これらの追加運転のための無駄などが生じていた。そこでこの排水を回収しその熱を生かして純水の加温に使う再利用システムを構築。蒸気ドレンを100%再利用できるようにし、ボイラーの追加運転を行わなくてすむようにした。これにより、純水の加温蒸気量を47%削減し、ボイラーの追加運転費用をゼロに低減できたとしている。
これらの取り組みを組み合わせることで、ウエハ洗浄用の純水温度を12℃高めることができるようになり、加温のための蒸気量は67%削減につなげることができた。蒸気量の年間削減効果は5660トンで電力量の年間削減効果は341MWhになるという。門脇氏は「基本的にそれぞれで使われている技術は革新的なものではないかもしれないが、今ある有効活用できていないエネルギーは何かを考えて実施したところがポイントだ。知恵と工夫を絞って行った改善の結果だ」と語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.