機械設備の高い信頼性なくして、高精度の生産管理は存在しない生産性向上のもう一つのキモは、設備管理の徹底にあり(3)(4/4 ページ)

» 2022年03月22日 10時00分 公開
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4.機械設備の故障時間と故障の修復時間

4.1 MTBFとMTTR

(1)MTBF

 MTBF(平均故障間隔時間:Mean Time Between Failures)は、機械設備が故障して、再び次に故障するまでの時間の平均値を表すものです。この値が大きくなれば機械設備の信頼性が高いことを意味します。MTBF(h)は、「(負荷時間−故障停止時間)÷故障停止回数」で算出します。

(2)MTTR

MTTR(Mean Time to Repair:平均故障修復時間)は、機械設備が故障し、修復した後、良品が生産開始されるまでに費やした故障修復時間の平均値を表すものです。この値が小さければ機械設備および保全作業者の保全性が高いことを意味しています。MTTR(h)は「修復時間÷故障停止回数」で算出します。

4.2 その他の設備保全の管理指標

 機械設備の保全を計画的かつ確実に実施して機械設備の寿命を延ばして、保全費用の削減と生産性の向上を目標とする際には、収益性を高めるといった経営的な指標の管理も重要になります。そこで、信頼性や保全性以外の経済性指標についても説明しておきます。

(1)MTTF

 MTTF(Mean Time to Failures:故障までの平均時間、平均故障寿命)は、機械設備を構成する各種部品の寿命の平均値を表すもので、ベアリングやセンサーなどの個々の部品が寿命によって使えなくなる平均時間のことをいいます。従って、この値が大きければ部品の寿命が長いことを意味します。この時間を把握することで、点検頻度や機構部品などの交換頻度の設定に役立てようとする考え方です。

(2)保全費用の内製化比率

 保全費用の内製化比率は、機械設備の保全活動に費やす費用のうち、自社内の保全要員によって行われた保全活動に要した費用の割合を示したものです。自社内の保全力の強さを示す指標で、この指標が高ければ生産設備が突発的に故障したときにも迅速に対処することができるということです。また、計画的な保全活動が行われていることも意味しています。TPM(Total Productive Maintenance)の「自主保全体制の確立」に相通ずるものがあります。

(3)保全費用の原単位

 保全費用の原単位は、機械設備の保全活動に要した費用を生産する製品の生産数量や生産高で除した値をいいます。この値は製品の原単位当たりの保全費用を示しています。この指標が低ければ、製品当たりに要する保全費用が安いために導人された機械設備の投資効率が高いことを意味しています。

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 保全活動は、機械設備を切り口にした製造管理技術でもあります。例えば機械設備で品質を作り込むという考え方に立脚すれば、関連する生産要素を管理することによって、その出力結果である「品質(Quality)、原価(Cost)、納期(Delivery)」の水準を高めようとするものであるといえます。

 機械設備の保全活動の実施が、具体的に生産の管理水準にどのような影響を及ぼしているかを調査した結果があります。生産の管理水準を表す指標としては幾つか考えられますが、この調査では、製品不良率、稼働率、MTBF、MTTR、1回当りの段取り時間、1日の段取り回数、設計期間、製造期間、製品仕掛り量、材料の在庫量などへの影響を見たものです。

 産業の種別ごとの管理水準に及ぼす成果は、装置産業ではMTTRと製造期間で高水準となっていることが多く、加工産業や組立産業では、製品仕掛り量、材料の在庫量の側面で効果的という結果が得られています。

 また、保全方式の面から見てみますと、装置産業では予防保全、予知保全、生産保全が効果を発揮するということが分かっています。加工産業や組立産業においては改良保全、予知保全、生産保全、TPMに大きな成果が現れていることも分かりました。この点でいえば、加工産業や組立産業では、改良保全が手軽で成果が得やすいと考えられます。装置産業では、改良保全というよりも予防保全で対応した方がより成果が大きいといえます。

筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)

日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。



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