保険適用が拡大する手術支援ロボット「da Vinci」、デジタル活用でアプリも投入:医療機器ニュース(2/2 ページ)
順天堂大学 医学部の鈴木健司氏
なお、マイ・インテュイティブは、2021年9月から約20人のダビンチ手術の執刀医を対象にパイロット運用を行い、使用感や活用方法のフィードバックを経てから、今回の本格導入に至っている。会見では、マイ・インテュイティブのパイロット運用に参加した順天堂大学 医学部 呼吸器外科学講座 主任教授の鈴木健司氏が登壇し、肺がん手術の課題や、ダビンチを用いたロボット支援手術の有効性などについて説明した。
鈴木氏は、呼吸器関連の手術を年間500回行っており、そのうち70回でダビンチを活用している。同氏は「日本では喫煙者数が年々減少しているにもかかわらず、肺がんによる死亡数が増えている。以前は扁平上皮がんが多かったが、近年は症状が出ず進行してからがんの存在が判明する腺がんが多くなっている」と語る。また、現在の肺がんの手術では肺葉の切除が一般的だが、より小さな面積を切除する「区域切除」が可能になる研究結果が出てきているという。「人類史上に残る大きな結果になるだろう」(鈴木氏)。
また、肺がんに対するダビンチを用いたロボット支援手術が大きな効果を上げていることも紹介した。鈴木氏は、一昔前の肺がん手術について「体の後方から25〜30cmと大きく切開しなければならず、手術時間は4時間、出血量も200〜300mlという大手術だった」と指摘。しかし、ダビンチ手術の場合、肋骨に沿って8mm程度の穴を4つ開けるだけでよく、切開が不要で、出血もほとんど起こさずに済む。
一昔前の肺がん手術[クリックで拡大] 出所:順天堂大学 医学部 呼吸器外科学講座
ダビンチ手術では切開が不要になる[クリックで拡大] 出所:順天堂大学 医学部 呼吸器外科学講座
また、ダビンチを制御するコンソールを2つ使うダブルコンソールにより、若手とベテランの執刀医が二人羽織のような形で手術を行うこともできる。鈴木氏は「ダビンチ手術を効率的に学ぶ上で、今回発表のマイ・インテュイティブは、外科医とダビンチをデジタルにつなげるポータルとして活用できる。執刀医が自身の現在の立ち位置を確認できるという意味でも重要だ。私自身はこれまで、目の前の手術に集中するため、手術中に手術時間を気にすることはなかったが、マイ・インテュイティブを使えば、手術が終わった後に手術時間などのさまざまなログデータを確認して、次の手術に役立てられる」と述べている。
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