2021年のグローバル生産を足止め、半導体不足、部品供給や物流の混乱自動車メーカー生産動向(2/4 ページ)

» 2022年02月24日 06時00分 公開
[MONOist]

トヨタ自動車

 メーカー別に見ると、トヨタの2021年のグローバル生産台数は前年比8.5%増の858万3985台と2年ぶりに前年実績を上回った。販売面でもダイハツ工業と日野自動車を合わせたグループ世界販売がフォルクスワーゲン(VW)グループを押さえて2年連続で首位だった他、米国でもゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて初のトップとなった。ただ、生産台数自体は2019年との比較では5.2%減と、コロナ前の水準には戻っていないことが分かる。

 海外生産は前年比14.4%増の570万6023台と4年ぶりにプラスへ転じた。コロナ禍前の2019年との比較でも1.2%増やした。地域別では、主力の北米が前年比12.1%増の179万4120台と回復し、5年ぶりにプラスへ転じた。東南アジアからの部品供給の影響はあったが、前年がコロナ禍で生産停止を余儀なくされたことで2桁パーセント増を記録した。国別では米国が同14.0%増、メキシコが同31.3%増と伸長し、カナダは同0.1%減と前年並みだった。中南米は同49.9%増と大きく回復。欧州も部品供給難の影響を受けたが、前年のロックダウンによる生産停止の反動増で同8.1%増となった。

 アジアは同14.0%増の275万1523台と3年ぶりのプラス。前年のロックダウンの影響が大きかったインドネシアやフィリピン、インドなどが大きく伸長し、主力のタイも2桁パーセント増を記録した。アジアでは唯一ベトナムがロックダウンの影響で同29.8%減とマイナスだった。中国は、2020年がいち早く回復した影響などにより同7.3%増の164万9653台と1桁パーセントの伸びにとどまったが、中国で生産する日系メーカー5社の中では唯一プラスを確保した。

 一方、国内生産は前年比1.5%減の287万7962台と2年連続のマイナス。前半の1〜6月は、2020年がCOVID-19感染拡大により稼働調整を実施していたことや、他社に比べて半導体不足の影響を抑えられたことで、前年同期比20.0%増と高水準を維持したものの、夏ごろから東南アジアからの部品調達難の影響が深刻化。9、10月は前年比で半減まで落ち込むなど厳しい状況に陥った。

 東南アジアからのサプライチェーンの混乱が落ち着きを取り戻しつつある中で、トヨタは挽回生産を積極的に進めている。12月単月のグローバル生産は前年同月比6.0%増の80万1145台と、5カ月ぶりにプラスへ転じるとともに、12月として過去最高を記録した。

 けん引役は海外生産で、同7.5%増の54万385台と2カ月連続で増加し、12月の過去最高を更新。地域別では、中国は「ハイランダー」「ハリアー」などの新型車が好調で、同21.8%増と2カ月連続で増加した。インドも同2.4倍と大きく伸長し、インドネシアやタイも政府施策への駆け込み需要や販売促進策により好調を維持。フィリピンやマレーシア、台湾、ベトナムなどの低迷をカバーし、アジアトータルでは同20.0%増と好調だった。一方で、主力の北米は前年の水準が高いことに加えて、依然として東南アジアからの部品供給難の影響が続いており、同12.5%減と6カ月連続のマイナスだった。欧州も部品調達難で同7.7%減と伸び悩んだ。

 国内生産も回復しており、12月単月では前年同月比3.2%増の26万760台と5カ月ぶりにプラスへ転じた。依然として部品供給難による生産調整は実施しているものの、影響は徐々に縮小しており、「カローラクロス」やレクサス「NX」など受注が好調な新型車の生産を増やしている。ただ、1月以降は国内でのオミクロン株の感染拡大により、調達先のサプライヤーで稼働が停止した。これによりハイペースの挽回生産を予定していたトヨタも計画変更を余儀なくされているのが実情だ。

ダイハツ工業

 グループのダイハツも回復傾向を示している。2021年のグローバル生産は、前年比8.6%増の151万5130台と2年ぶりに前年実績を上回った。ただ、2019年との比較では約1割減にとどまった。けん引役は海外生産で、同32.1%増の63万9367台と2年ぶりにプラスへ転じた。特にインドネシアが前年のロックダウンに対する反動増で前年比7割増と大幅な伸びを見せた。一方、マレーシアは変異株の感染拡大によるロックダウンで、6月1日から8月中旬まで工場の稼働停止を余儀なくされた結果、前年に比べて12.5%減少した。

 国内生産は前年比3.8%減の87万5763台と2年連続で減少した。軽自動車は前年並みだったものの、登録車は同10.4%減と振るわなかった。半導体不足で6、7月と稼働停止日を設けたことに加えて、ベトナムとマレーシアからの部品供給が滞ったことで8月下旬から大規模な生産停止に追い込まれた。国内生産は9月に前年同月比68.2%減とピークを迎え、10月も同44.2%減と低迷した。その後11月には部品供給が改善した他、前年に発生した樹脂バックドアなどの調達先であるエイエフティーの塗装ラインでの火災による生産停止の反動増があり、同13.5%増とプラスに転じた。

 12月単月も前年同月比1.0%増の8万4985台と2カ月連続のプラスで、12月の国内生産として過去最高を更新した。前年も火災による生産停止からの挽回生産で高水準だったが、部品供給の回復と新たにシリーズハイブリッドモデルを追加した「ロッキー」およびトヨタ向けにOEM供給する「ライズ」や「トール/ルーミー(トヨタ)」の販売好調により、登録車生産が同8.5%増と伸び、12月として過去最高を記録。一方、軽自動車は同2.8%減と伸び悩んだ。

 12月の海外生産では、インドネシアは前年の反動増が続いており前年同月比70.3%増。マレーシアは同8.7%減と低迷した。海外生産トータルでは同33.3%増の6万7103台と5カ月連続のプラスとなった。その結果、12月の世界生産は同13.1%増の15万2088台と2カ月連続で増加した。

スズキ

 スズキも回復した。2021年のグローバル生産台数は、前年比11.1%増の286万5652台と3年ぶりにプラスへ転じた。ただ、2019年との比較では6.2%減となった。このうち同社生産の半数以上を占めるインドは、前年がCOVID-19感染拡大によるロックダウンなどを実施していた反動増により、前年比23.3%増の166万5811台とけん引し、3年ぶりのプラス。その結果、海外生産も同20.6%増の199万725台と3年ぶりに増加した。

 海外生産以上に東南アジアからの部品供給難などで低迷したのが国内生産だ。2021年は、前年比5.8%減の87万4927台と3年連続で減少した。前年がCOVID-19感染拡大による生産調整や完成検査問題対策で工場のラインスピードを落としていたことを考慮すると、スズキの生産能力に対してはかなり低い水準となり、半導体不足など部品供給の影響を大きく受けていることが伺える結果となった。

 部品供給難は依然として続いており、12月単月のグローバル生産台数も前年同月比6.4%減の25万9606台と5カ月連続で減少した。国内生産への影響が大きく、同13.0%減の8万178台と7カ月連続のマイナス。海外生産は、同3.1%減の17万9428台と4カ月連続で減少した。インド生産は同2.0%減で5カ月連続のマイナスだった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.