直接類比表現による電気系と機械系の比較を図6に示す。既に述べたように、支配方程式は両者で同じであるが、対象とする物理モデル(図で表現したモデル)では違いがあることが分かる。電気系では、各素子(要素)が直列につながっているのに対し、機械系では並列につながっている。
すなわち、直接類比では支配方程式が同じ形式で表現されるために、その解法は例えば図7のブロック線図による解法のように、電気系でも機械系でも同じである。一方、解く際には入力(図7の場合は力)を決めて、変位(速度)について解くことになる。また、図表現では類推が全く効かなくなる可能性があり、解析ツールとして構成しようとすると問題が生じる。
逆類比では、1ページ目の図5右図の対応関係を用いる。図8に逆類比による電気系と機械系の類推を示す。機械系の要素の定義式に違和感はあるものの、図表現としての電気系と機械系の類推は成立しており、“ポテンシャル変数は等しい”“フロー変数の和はゼロ”といった対応もできている。
図8の関係を用いて、ある電気回路を表現した例を図9に示す(参考文献[2])。10個の未知数に対して、10個の関係式(要素の定義式、接点方程式、閉路方程式)となり、微分代数方程式として解くことができる。
以上、類推モデリングに関して、直接類比と逆類比について説明した。両者の比較を表1に示す。両者それぞれ長所/短所があり、目的に応じて両者を使い分けすればよい。
1Dモデリングでは、言語として「Modelica」を使用する場合があり、表1に示すように逆類比を採用している。逆類比は直感的に理解しづらい面もあるが、類推モデリング自体が便宜的な方法であると理解した上で、割り切ってその仕組みを把握しておくことが重要である。
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