世界的な工場の自動化ニーズの高まりから、コロナ禍後の業績が好転しているのが安川電機だ。安川電機 代表取締役社長の小笠原浩氏に現在の状況と、2022年の方向性について話を聞いた。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は続くものの、製造業のモノづくりは正常化が進み、生産財への投資拡大も進んでいる。一方で、経済活動の停止から再始動、各地の断続的なロックダウンにより、半導体不足をはじめ、サプライチェーン混乱が生産財にも大きく影響する状況が生まれている。こうした中で「2022年は悪い年にはならないのではないか」と前向きな見通しを示しているのが、安川電機 代表取締役社長の小笠原浩氏だ。
安川電機では、COVID-19で混乱した2020年度(2021年2月期)に対し2021年度(2022年2月期)は業績が回復傾向を示している。サーボモーターやインバーターなどのモーションコントロール事業、産業用ロボットを中心としたロボット事業、発電関連などの大型設備向けのシステムエンジニアリング事業など主要3事業の業績も好転している。「i3-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)」など、製造現場でこれらの個々の製品を結ぶソリューションコンセプトなどの浸透も進み、新たな価値創出への取り組みも進んでいる。小笠原氏に安川電機の現状と、2022年の方向性について話を聞いた。
MONOist 変異株も含めCOVID-19での混乱は続くものの、経済活動は正常化が進んでいます。コロナ禍から現在の状況についてどう捉えていますか。
小笠原氏 コロナ禍以降の状況を見ると、まず中国での経済活動が再開し正常化が進んだ。その後、欧州や米国での正常化が進み、2021年秋以降になってようやく日本でも安定した経済活動が行えるようになってきた。各地でさまざまな状況が生まれており、その中で日々に新たな対応が生まれている中で全てが完璧に良いというわけではないが、全体的に考えると悪くない状況だと捉えている。特に中国は悪い要素はなく、さらなる成長が期待できる。
MONOist COVID-19の直接的な影響は収まりつつあるものの、間接的に生まれたサプライチェーン混乱の影響は強まっているように感じます。その点についてはどう考えますか。
小笠原氏 確かに部品不足や素材不足はさまざまなところで生まれているが、モノが作れない状況はどこも同じなので、対応は進めつつも気にしすぎないように、取り組むしかないと考えている。現状では、足りないものが日替わりで生まれるくらい何も問題がない日がないくらいだ。樹脂やコネクター、銅線など足りないものはいろいろある。ただ、継続的に足りないのが半導体だ。外資系半導体が本当に足りない。
対策としては、さまざまな手は打っているが、特別な手があるわけではない。以前からサプライチェーンの対応として進めてきたものを組み合わせて行うことだけだ。例えば、足りない部品で汎用的なものは市中からの一般調達で行ったり、新しい部品に置き換えて設計変更を行ったり、ボトルネックになっている部品を回避するような取り組みを進めている。これらの取り組みを進めても難しい場合は、調達先や顧客との直接交渉で何とか対応する形だ。
あらゆるものが足りない現状では「真の意味で足りないもの」を把握することが重要だ。モノづくりは部品1つが足りなくても製品を作ることができない。そのため、他のものは調達ができても1つの部品が調達できないために、さまざまな企業で滞留しているモノが多く生まれている。われわれも残念ながら数多くの製品で顧客に待ってもらっているが、よく見ていけば、われわれの製品を提供できたとしても、他社が供給する部品が足りず、顧客がモノを作れるわけではない場合も多い。顧客企業が本当に製品を作ったり、最終的に使ったりするタイミングを把握し、そこに間に合うように、調達先との交渉を進めるなど、最後は直接的なコミュニケーションが重要になってくる。これらは2011年の東日本大震災などでも行ってきたことで、ある意味では企業としての対応に慣れている部分もある。
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