半導体供給網はいつ落ち着くのか、品質不正問題にも注目が集まった2021年製造マネジメント 年間ランキング2021(2/2 ページ)

» 2021年12月24日 09時00分 公開
[池谷翼MONOist]
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統計データで中小製造業の未来を読み解く大人気連載!

 ランキング2〜4位、そして9位の記事は、小川製作所の小川真由氏による連載「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」のものとなりました。同連載では小川氏が、オープンな統計データという「事実(ファクト)」を分析して、日本経済の現状や中小製造業がとるべき方向性について解説しています。明晰な論理の組み立てから、通説や直感に反する結論を導き出す内容が人気を集め、第1回の「われわれは貧困化している!? 労働賃金減少は先進国で日本だけ」から大反響を呼んでいます。

 例えば、ランキング2位の「成長しない日本のGDP、停滞の20年で米国は日本の4倍、中国は3倍の規模に」では、日本では名目GDPが1997年をピークに、2015年までのほぼ20年間、増加していないことを指摘しています。しかも、国際的に見ると日本経済が“停滞”している間に、米国や中国などが大きくGDPを伸ばしており、現在では米国は日本の4倍、中国が3倍の経済規模にまで成長しているとのこと。

 このことから小川氏は、日本は世界第3位のGDPを誇る経済大国であるものの、「唯一停滞している先進国」だと指摘しています。また、ランキング3位の「今や“凡庸な先進国”へ、1人当たりGDPに見る日本の立ち位置の変化」ではさらに論を進めて、国民1人当たりのGDPがOECD加盟国では平均値にとどまることを示しています。

 連載では、知っているつもりになっていた日本経済の実態をマクロな視点で明らかにしつつ、その中で中小製造業、ひいては国内製造業がどのようなかじ取りをするべきかを分かりやすく語ってくれます。著者はいわゆる「経済学の専門家」ではありません。しかし、むしろその事実こそが、誰もがWebで入手できるオープンデータからでも、これだけ豊かな知見を引き出せるのだということを端的に示しているように思えて、新鮮な驚きを覚えます。

三菱電機の品質不正問題にも注目集まる

 ランキング7位には、「1700社以上に検査不正製品を納品した日立金属の調査結果、1980年代から常態化」が入りました。2021年1月に日立金属で発覚した、検査結果の改ざんや不適切な数値記載などを報じた記事です。なお、日立グループ全体では、直近で日立Astemoがブレーキ部品やサスペンション部品の検査不正が発覚したことを公表しています。

 製造業の検査不正というと、三菱電機による鉄道車両用空調装置の不適切検査の報道が強く記憶に残っている方も多いでしょう。一連の問題を受けて三菱電機では、引責辞任した杉山武史氏に代わり新社長に就任した漆間啓氏の体制のもと、改革に向けた取り組みを推進しています。「品質風土」「組織風土」「ガバナンス」の改革を三位一体で進めることで、不正再発防止に取り組むとしています。

 三菱電機の事例は大きな話題になりましたが、まだ明るみに出ていないだけで、国内製造業には他にも見過ごされている不正がある可能性も残念ながら否定できないでしょう。今後は、不正を糾弾するだけでなく、不正の原因を分析し、必要な対策を製造業全体で考え、共有する姿勢も必要になってくると思われます。



 ランキング表を2020年と比較してみると、連載記事が多数ランクインしていることに驚き、同時にとてもうれしく感じました。MONOistでは日々のニュースだけでなく、特定分野に深く知見を持つ方の連載/寄稿記事も多数掲載しています。2022年も日々の業務のヒントになる、読み応えのある専門記事をたくさんお送りしていきたいと思います。

 最後に、2021年のランキングを再掲します。


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