製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集

三菱電機の鉄道車両用空調装置で不適切検査が発覚、「全社再点検」をすり抜け品質不正問題

三菱電機は、長崎製作所が製造する鉄道車両用空調装置の一部において、購入仕様書の記載とは異なる検査の実施や検査の不実施、検査成績書への不適切な記載を行っていたことが判明したと発表した。この他にも、過去に出荷した鉄道車両用空気圧縮機ユニットの一部において同様の不適切検査を行っていたことが判明したという。

» 2021年07月01日 05時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 三菱電機は2021年6月30日、同社の長崎製作所(長崎県時津町)が製造する鉄道車両用空調装置の一部において、購入仕様書の記載とは異なる検査の実施や検査の不実施、検査成績書への不適切な記載を行っていたことが判明したと発表した。社内調査で同年6月14日に判明したもので、調査を進める中でこの他にも、過去に出荷した鉄道車両用空気圧縮機ユニットの一部において同様の不適切検査を行っていたことが6月28日に判明したという。

 今回判明した不適切検査は、大まかに「購入仕様書の記載とは異なる検査の実施や検査の不実施」と「検査成績書への不適切な記載」の2つに分かれる。契約によって顧客ごとに購入仕様書に記載される項目は異なるものの、判明した不適切な内容は以下のようになっている。

  1. 購入仕様書の記載とは異なる検査の実施、検査の不実施
    • 冷房能力試験・冷房消費電力試験において、異なる温度湿度条件で試験を実施し、良否を判定
    • 暖房機能付き装置(ヒートポンプ暖房形)を対象とした暖房能力試験・消費電力試験において、異なる温度湿度条件で実施
    • 防水試験において、異なる試験方法で試験を実施し、良否を判定
    • 過負荷試験・振動試験・絶縁抵抗試験・耐電圧試験・形状および寸法検査の一部において、仕様書の記載と異なる社内試験要領に基づき実施
    • 空気圧縮機ユニットの後継機種の形式試験において、先行機種から変更なく採用した内部の圧縮機に関わる特性試験は実施せず、先行機種での試験結果を採用
  2. 検査成績書の不適切な作成
    一部の顧客に提出した検査成績書に実際の数値とは異なる数値を記載していた
    • 指定の寸法検査を実施せず、検査成績書に数値を記載
    • 指定の試験方法とは異なる防水試験により判定し、結果を記載
    • 指定の環境条件とは異なる条件下で冷房能力試験・冷房消費電力試験を実施し、指定の条件下で先に検査合格した形式試験時の結果を参照し、検査成績書を自動作成

 なお、三菱電機は、これらの不適切検査の判明後、直ちに当該製品の出荷を停止し、適正に検査が完了していることを確認した製品のみを出荷しているという。現在、顧客である鉄道事業者などに状況を報告しているところで、これまでに出荷した当該製品そのものの安全・機能・性能には問題がないことを、三菱電機として確認している。不適切検査に起因する事故も確認されていないとする。

 今後は、不適切検査の原因究明とともに再発防止策を策定して速やかに公表する方針。三菱電機グループ内における同様の不適切検査の有無については、外部の弁護士などを含む調査委員会を組成し点検するとしている。

 三菱電機は、2018年12月に子会社のトーカンで発覚した不適切検査を受けて、グループの国内全事業所と子会社を対象にした「品質保証体制の再点検(全社再点検)」を実施し2019年8月に公表していた。それまでの調査で、三菱電機製エレベーターの一部製品で国土交通大臣認定に不適合な仕様だったことや、子会社の菱三工業で不適合品の出荷があったことなどが判明していたが、今回の長崎製作所における不適切検査は報告されていない。

 同社は2021年6月に発表した2021〜2025年度の中期経営計画において「複数の品質管理上の不適切行為の発生を踏まえ、当社の品質基本理念を再徹底するとともに、関連法規・規格や顧客との契約仕様を確実に満たす品質管理体制を強化」することを挙げていた。その矢先に、グループ全体を対象にした2019年の「全社再点検」でも洗い出し切れなかった不適切検査の事例が新たに発覚したことになる。

2021〜2025年度の中期経営計画では「製品・サービス品質」も重要な取り組みの1つに挙げていた 2021〜2025年度の中期経営計画では「製品・サービス品質」も重要な取り組みの1つに挙げていた(クリックで拡大) 出典:三菱電機

⇒その他の「品質不正問題」の記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.