基本の考え方は分かりましたが、新たな形でのモチベーションの作り方としてどういう手があるのでしょうか。
企業によって異なってくるとは思うけど、機械でモノづくりを行うようになっても、新たな作り方や改善の在り方など、「新たな枠組みを生み出す」という力は当面は人の力でなければ難しいところだと思うわ。そういうところで力を発揮してもらえるような仕組みや取り組みを進めるというのが一つかしら。
機械任せでは生み出せない、課題に対するアクションの構築に人の力を生かすというのは1つの方向性だと考えます。例えば、パナソニック エレクトリックワークス社 新潟工場では、スマート工場化を積極的に進める一方で、現場の意欲を高め、独自でちょっとした改善を進められる「からくり改善」(※)を積極的に活用しています。
(※)「からくり改善」は日本プラントメンテナンス協会の登録商標です。
活動を主導するパナソニック エレクトリックワークス社 ライティング事業部 ものづくり革新センター 生産技術開発部 工法開発科の徳吉潤成氏は「活動のきっかけとなった職長からの相談では、モノづくりに向ける気持ちの問題があった。モノづくりのハイテク化が進めば進むほど、製造する製品よりも製造設備への対応に時間が取られることになる。製造をしているのか設備のお守りをしているのか分からない状況になる。現場独自の工夫で製品を作る気持ちを見直すためにも『からくり改善』には意味があると考えていた」と語っています。
「からくり改善」によって「人手」と「ハイテク」の間の領域での改善を引き出すことで現場のモチベーションを高めるとともに、改善の幅を広げることができたとしていました。こうした取り組みは、人でしか気付けない新たな枠組みを生み出すところで現場の力を生かすというものだと考えます。
他には、どういうものがありますか。
そうね。思い付くところでいくと「機械へのコピー」や「機械の教師」など、機械との関わりの中でスキルを生かすという方向性かしら。AIの強化にスキルを生かしたり、ノウハウをパッケージ化して販売したりというようなことかしら。
これは、機械に積極的に自分たちのスキルを移転させていくという動きになります。ただ、スキルを生かして新たな価値を生み出すことができればそれが「働きがい」につながるという考えです。例えば、菓子メーカーのユーハイムではバウムクーヘンの焼成を自動で行うバウムクーヘン専用AIオーブン「THEO(テオ)」を展開していますが、職人独自のノウハウをAIに取り込んで実現したといいます。
プロジェクトを担当したユーハイム 中央工場長の松本浩利氏は「職人も自分たちのデータが生かされている『自分たちの機械』という思いがあった。機械も職人の一部であり、そういう信頼関係が開発を支えてくれた」と松本氏は語っています。ユーハイムにはバウムクーヘン作りにおけるマイスターが5人いますが、それぞれの癖などもあり「マイスターブランドでの焼き具合の製品化なども可能かもしれない」(松本氏)などの新たな可能性も示していました。
なるほど。いろんな考え方があるんですね。あらためて落ち着いて考えてみます。
簡単に解答が出るものではないと思うけれど、いろいろな立場の人と話をしてみることね。頑張ってね。
さて、今回はスマートファクトリー化の中で後回しにされがちだった「現場の働きがい」について取り上げました。明確に答えがあるものではありませんが、日本の製造業では特に強みとしてきた現場力に関係するものですので、考えていくべき問題だと考えます。次回も、製造現場において失敗するパターンや見過ごされがちなポイントについてさらに掘り下げたいと考えています。
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