特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2022年02月07日 13時30分 公開

スマート工場化の「現場の巻き込み」問題をどう解決するかいまさら聞けないスマートファクトリー(16)(1/3 ページ)

成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。第16回では、スマートファクトリー化で必要な「現場の巻き込み」について紹介します。

[三島一孝,MONOist]

 スマートファクトリー化は製造業にとって大きな関心事であるにもかかわらず、なかなか成果が出ない課題を抱えています。本連載では、スマートファクトリーでなかなか成果が出ないために活動を縮小する動きに危機感を持ち、より多くの製造業が成果を得られるように、考え方を整理し分かりやすく紹介しています。今回(第16回)と次回(第17回)では、スマート工場で難しいと捉えられている「組織の巻き込み」について紹介したいと思います。今回はその中で、スマートファクトリー化で価値を生む原動力となる「現場の巻き込み」について紹介します。

本連載の趣旨

 本連載は「いまさら聞けないスマートファクトリー」とし、スマートファクトリーで成果がなかなか出ない要因を解き明かし、少しでも多くの製造業がスマートファクトリー化で成果が出せるように、考え方や情報を整理してお伝えする場としたいと考えています。単純に解説するだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じてご紹介します。

架空企業の背景

 従業員300人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「第4次産業革命を進める」と指示され途方に暮れます。そこで、第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに訪問し、さまざまな課題に立ち向かいます。


本連載の登場人物

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矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)

自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、どっぷりのめり込む。最近閉塞感にさいなまれている。


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印出 鳥代(いんだす とりよ)

ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。インダストリー4.0などを中心に製造業のデジタル化についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。

前回のあらすじ

 さて、前回のおさらいです。第15回の「スマート工場化が行き着くと、現場の『働きがい』はどうなるのか」では、スマートファクトリー化で考えておかなければならない現場の「働きがい」について取り上げました。

 スマートファクトリー化を進め、工場の生産活動の中で自動化領域が広がれば広がるほど、人が実際に手を動かして直接「モノを作る」ということは減ってきます。そうなると「作る機械の世話をするのが人の役割」になっていきます。化学プラントなどのプロセス製造業や半導体などの高度な電子デバイスの領域では、もともと「人手で直接作る」という比率が多くありませんが、その他の領域でも同様のモノづくりが広がってくるわけです。そうした時に従来、実際に手を動かしてモノづくりを行っていた現場のモチベーション維持が難しくなってきます。矢面さんも本当に弱っていましたね。

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今まで私はスマート化を進めるのは、作業負荷を下げられたり、無駄なことを減らせたり、現場のみんなの役に立つことだと考えて、だからこそ頑張ってこられました。それが、逆にみんなのやりがいを奪うようなことになっていると考えると、根本から揺らぐような感じになってしまって、どう受け止めたらいいのか分からなくなってしまって……。


 スマート工場化が進めば、現場での人の役割も当然変化してきます。スマート化の価値を定着させていくためには、人事制度や体制、また各業務部門のミッションの再整理なども含めて、あらためて組織的に検討すべき内容も多く残されています。人のモチベーションや働き方の再整理なども含めて検討を進めていくべきだという話でした。

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定義が難しいけれど、働きがいは「自分の力が役に立っている」という実感を得られるということじゃないかしら。だったら、そういうものを作るということよ。自分たちが積み上げたスキルが無駄になることの懸念や、これからその力が役に立たないものと位置付けられる不安など、かみ砕けばいくつかの要素に分けられると思うの。それを1つ1つ解決していくということよ。


 現場の力をさらに引き出す新たな枠組み作りやプロジェクトを進めたり、スマート化が進む中で機械にノウハウを注入する役割で新たな価値を生み出したりするなど、現場の「人の心」や「意欲」に目を向けた取り組みがより必要になってくるといくことです。


 さて今回はこの「現場の働きがい」とも少し関係しますが、スマートファクトリー化を進める中でよく聞く「現場をいかに巻き込むか」について説明していきたいと思います。

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