それでは、オムロン京都太陽での具体的な取り組みを見ていこう。オムロン京都太陽では、人と機械の協調生産体制を取っているが、全自動機の導入を拡大するのではなく、人ができないことや苦手なことを機械に任せるという方針を取っている。身体/知的障害者には、治具や半自動機の開発や業務改善で活躍できる場を広げていく。一方で最近大きく増えている精神/発達障害者には、コミュニケーションの工夫により自己理解と相互理解を深め、活躍できる領域を広げている。
例えば、改善を行う際にも、作業者がどういう人でどのような機能が必要で、作業者にはどのような操作性が最適かというように、業務に人を付けるのではなく人に業務を付ける形で割り当てを決め、配置や工程を作り上げていく。そのため、現場では個人に最適化されたさまざまな半自動機が活用されている。
「通常の工場であれば、画一的な操作性の同じ半自動機が用意され、同じような作業内容で作業を行うというのが一般的だが、オムロン京都太陽では、個人に最適化された操作性を実現するために全て異なる半自動機が稼働している」(三輪氏)という。
こうした取り組みの成果の1つが、パーツを袋に詰めて封をする袋詰め工程である。このラインでは「袋を取る」「袋を開ける」「パーツを入れる」「封をする」という4つの工程の作業を行うが、手に障害がある人にはこうした作業が難しい場合もある。ただ、そういう人でも4つの工程の全てが難しいわけではなく、オムロン京都太陽ではどういう作業が難しく、どういう作業はできるのかを検証した。そして、袋を取って開け細かいパーツを入れるところまでは半自動化し、残りの大きなパーツを入れる作業と封をする作業は人が行うという形で、誰もが働けるようにした。
同様に、ソケットにパーツをはめる工程でも、作業の細分化を行うことで、できる作業とできない作業を見極め、できない作業についての工夫を重ねることで、より多くの人に働きやすい環境を実現している。
この作業での問題は、ソケット内にさまざまなパーツを差し込んでいくが、片手作業者には向きによっては指が当たり挿入しにくいところがあるという点だった。健常者であれば、片手で部品を持ち、もう一方の手でソケットの向きを変えることで、ソケット本体を回転させながら入れやすい向きに変えて部品を挿入する作業を1度にまとめて行える。しかし、片手作業者では同時に行えないため、回転動作の分、作業効率が落ちる。そこで、オムロン京都太陽では、右手だけで挿入作業を行う作業者と左手だけで挿入作業を行う作業者をペアとし、回転工程なしに作業を行えるようにした。これにより、それぞれの得意分野のみに特化し、作業効率を高めることに成功したという。
知的障害者などに対しても作業の切り分けなどを進め、認識の問題などをクリアしながら、働きやすさを実現するようにしている。例として、部品や製品を工場内で配送する配送担当者用の構内ステッカーの色分けがある。配送先ごとに色を決めておき、構内には廊下やエレベーターに全て、色に合わせた配送ルートをステッカーで示している。配送担当者は台車についているステッカーの色を見て、同じ色のラインやシールをたどって進むと配送先に到着するという仕組みだ。
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