2D図面の“一義性”を考える【その4】断面図を使用した図形の表し方3D CADとJIS製図(6)(1/4 ページ)

連載「3D CADとJIS製図の基礎」では、“3D CAD運用が当たり前になりつつある今、どのように設計力を高めていけばよいのか”をテーマに、JIS製図を意識した正しい設計/製図力に基づく3D CAD活用について解説する。第6回では、断面図を使用した図形の表し方を詳しく取り上げる。

» 2021年11月01日 10時00分 公開

はじめに

 前回は、傾斜部のように、第三角法の面だけでは形状やサイズなどを正しく表すことのできないものを「補助投影図」により表現する方法を解説しました。

 では、目に見えない内部などは、どのように表せるでしょうか?

 方法として「隠れ線(破線)」で表すこともできますが、それが必ずしも「分かりやすい図面」であるとは限りません。このような場合には「断面図」を使用します。今回は、この断面図による図形の表し方について解説していきます。

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1.断面図とは

 断面図については「JIS B 0001:2019 機械製図 Technical drawings for mechanical engineering」で、以下のように規定されています。

10.2 断面図(※JIS B0001:2019より抜粋/編集)

10.2.1 一般事項
一般事項は、次による。

  • a)隠れた部分を分かりやすく示すために、断面図として図示してもよい。断面図の図形は、切断面を用いて対象物を仮に切断し、切断面の手前の部分を取り除き、10.1(※注1)に従って描く
    ※注1:10.1には「投影図の表し方」が記述されています。
  • b)切断したために理解を妨げるもの又は切断しても意味がないものは、長手方向に切断しない
    • 例1:リブ(例えば歯車の)、アーム、歯車の歯
    • 例2:軸、ピン、ボルト、ナット、座金、小ねじ、リベット、キー、玉(鋼球、セラミック球など)、ころ(円筒ころ、円すいころなど)
  • c)切断面の位置を指示する必要がある場合には、両端及び切断方向の変わる部分を太くした細い一点鎖線を用いて指示する。投影方向を示す必要がある場合には、細い一点鎖線の両端に投影方向を示す矢印を描く。また、切断面を識別する必要がある場合には、矢印によって投影方向を示し、ラテン文字の大文字などの記号によって指示し、参照する断面の識別記号は矢印の端に記入する。断面の識別記号(例えば、A−A)は、断面図の直上又は直下に示す
  • d)断面の切り口を示すために、ハッチングを施す場合には、切り口は次による。注記 ISO 128-50(※注2)では、断面及び/又は切り口にはハッチングを施すと規定している
    ※注2:ISO 128-50は国際標準化機構規格(ISO)による規格で、Technical Drawingでは製図について書かれています。

 それでは図1を題材に三面図と断面図を作成し、どちらが内部形状を示すのに「分かりやすい図面」であるかを比べてみましょう。

題材となる3Dの部品形状 図1 題材となる3Dの部品形状[クリックで拡大]

 まずは、図1に示した部品の内部形状を、第三角法による面(三面図)によって示してみます(図2)。

三面図 図2 図1の部品の内部形状を三面図で表した場合[クリックで拡大]

 ご覧のように「外形線」と「隠れ線」で表すことができますが、内部空間の状態が分かりにくいかと思います。

 次に断面図です。3D CADによって断面図を作成する方法はいくつかあると思いますが、図3のように任意の面で部品形状をカットして断面が見えるようにします。ここでは、中心軸を通る正面の平面によって実形(部品形状)を切断するイメージで、断面図を作成しています(図4)。

3D CADによる断面作成のイメージ 図3 3D CADによる断面作成のイメージ[クリックで拡大]
断面図 図4 図1の部品の内部形状を断面図で表した場合[クリックで拡大]

 図4のような表現のことを断面図といいます。隠れ線では不明瞭だった内部空間が外形線だけで表され、誰が見てもその状態をよく理解できると思います。

2.断面図の種類

 実は「断面図」と一言でいってもさまざまな使い方があります。筆者の解釈で整理した限りでもこれだけの種類があります(図5)。

断面図の種類(筆者解釈による) 図5 断面図の種類(筆者解釈による)[クリックで拡大]

 断面図の種類については「JIS Z8114-1999 製図−製図用語」にも記載されていますが、図5はそれを参考に体系化したものになります。筆者自身、これら全てを使用したことはありませんが、断面図は製図の世界で非常に重要な図形の表し方の1つですので、ぜひポイントだけでも押さえておいてください。

 それでは、以降で主な断面図について簡単に見ていきましょう。

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