図1は、日本の各経済主体の金融資産です。
図2は、負債の推移を表したグラフです。
赤い線は1990年のバブル崩壊、1997年の金融危機、2008年のリーマンショックのタイミングを表しています。また、このグラフはあくまでも「お金」を表すもので、建物や機械設備などの「固定資産」は含まれませんので、ご注意ください。金融機関の金融資産や負債が今や4000兆円もの規模というのは驚きの数値ですが、これらは相殺されてほぼゼロになります。
注目いただきたいのは「家計」と「企業」(非金融法人企業)です。1990年のバブル崩壊までは、「企業」は金融資産も負債も増大していますが、それ以降は多少のアップダウンがありつつ、ほぼ横ばいです。一方で、「家計」は金融資産が増大し、1997年以降に負債が横ばいの状況が続いています。その代わり、政府と海外の負債が増大しています。特に政府は1993年ころから、海外は2003年ごろから急激に負債を増やしています。
図3は日本の各経済主体の純金融資産をグラフ化したものです。つまり金融資産(図1)から負債(図2)を差し引いた差額をプロットしたものになります。国の「経済のカタチ」を表す重要なグラフだといえます。
厳密には負債側に「株式」が含まれるなど、一般的な純金融資産と異なる点もありますが、ここでは便宜上「純金融資産」「純金融負債」と表記します。差し引きの金融資産として、どの主体がプラス(金融資産が超過)でどの主体がマイナス(負債が超過)なのかを表していると考えてください。合計値は必ずゼロとなります(若干の誤差が含まれます)。
まず特徴的なのは、「家計」の純金融資産が一方的に増大していることです。経済が停滞しているといわれていますが、統計上は家計の純金融資産は増えていることになります。当然、家計の純金融資産が増えるということは、他の主体の純金融負債が増えることを意味しますね。図3を見ると明らかなように、バブル崩壊までは企業が純金融負債を増やす存在でした。
企業の純金融負債と家計の純金融資産が鏡に映したように対照的に推移していますので、模範的な経済のカタチをしていたということがいえます。しかし、バブル崩壊後は企業の純金融負債が停滞、あるいは目減りしています。その代わりに「政府」と「海外」が純金融負債を増やしています。つまり、家計の資産が増える反対側で、本来は企業の負債が増えるはずがそうならないため、代わりに政府と海外が負債を増やしている状況と言えます。
この関係性は、現在の日本経済の状況を理解するのに極めて重要な事実だといえます。また、一見すると家計の純金融資産が増えていて、私たち国民が豊かになっているように見えます。実はこの家計の金融資産の中には、年金受給権や保険受給権など「まだ手元にないけど将来もらえるはずのお金」が500兆円ほど含まれます。さらに、家計の金融資産で最も多い現金・預金の大部分は高齢世帯に偏在していて、現役世代は貧困化しているという事実もあります。豊かに見える家計も、内実は現役世代の困窮や格差の拡大が含まれている点にご注意ください。
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