今回のデジタルヘルス証明は、日立独自の公開型生体認証技術であるPBIを用いた指静脈認証により、指静脈情報を一度登録すればその後は手ぶらで認証を完了できる点が最大の特徴になる。PBIは、生体情報の復元不可、紙やスマートフォンなどの媒体からの解放、指静脈にとどまらず顔や虹彩などのマルチモーダル対応などを特徴としている。また、今回の技術検証に用いたC-1が、COVID-19感染防止の観点から非接触で指静脈認証を行えることも重要だ。
また、H.U.グループが提供する、ウィズウェルネスや医'sアシストは既に利用実績を重ねており、陰性証明を行うための抗原定量検査とPCR検査を組み合わせた高精度検査も、羽田空港向けの検疫業務で2020年から採用されている。
なお、リモートでの問診や検査結果判定で協力した九州大学からは、九州大学病院 メディカルインフォメーションセンター長 教授で日本医療情報学会理事長を務める中島直樹氏が、電通との次世代医療データプラットフォーム連携協定の一環として参画した。「厚生労働省の指針によれば、検査機関による結果通知だけでは陰性証明にならないので医師の診断が必要だ。この医師の診断をリモートで行うことで、精度が高く、高速、多量、安価に医師の診断と判定が行われた陰性証明の発行が可能になるだろう。現在市中で利用できる医師の診断付きPCR検査とそれほど大きな差のない形で利用できるように努力したい」(H.U.グループ)という。
今回の技術検証における課題の1つがワクチン接種履歴の登録プロセスだ。参加者自身の手でアプリ上で登録を行うため真性を担保できない状態になっている。そのため今後の共同実証では、デジタル庁が推進するVRS(Vaccination Record System:ワクチン接種記録システム)のワクチン接種履歴とのデータ連携を進めたい考えだ。また、海外渡航にも利用できるように、国際標準の「スマートヘルスカード」に準拠したデータ仕様の実装も予定している。
鹿島は、同社が手掛ける建設現場での共同実証を進める他、建物内における人流に関する知見を活用し、同社事業における総合的なCOVID-19対策に組み入れていきたい考えだ。なお、共同実証が進んだ後のソリューションの外販については「ニーズがあれば参加企業と提供方法を検討していきたい。技術的には完成されたもので構成されているので、利用する場面や状況によって早期に提供できるものもあるのではないか」(鹿島)としている。
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