村田製作所は、「CEATEC 2021 ONLINE」において、位置検知向けに市場が拡大しているUWBモジュールを展示した。民生機器向けの「Type2BP」と産業機器向けの「Type2AB」をそろえており、2020年末の量産を目指し開発を加速している。
村田製作所は、「CEATEC 2021 ONLINE」(2021年10月19〜22日、オンライン開催)において、位置検知向けに市場が拡大しているUWB(Ultra Wide Band)モジュールを展示した。民生機器向けの「Type2BP」と産業機器向けの「Type2AB」をそろえており、2020年末の量産を目指し開発を加速している。
UWBは6.5G〜10GHzの周波数帯を用いる無線通信技術だ。500MHzという超広帯域信号を用いた1Gbpsクラスの高速通信が可能なことから2000年代に脚光を浴びたものの採用は広がらながった。しかし現在は、非常に短いパルスの電波を用いるImpulse Radioという技術との組み合わせによる高精度位置検知でスマートフォンなどへの採用が広がりつつある。広く知られている採用事例としては、アップル(Apple)のスマートタグ「AirTag」が挙げられる。また、通信技術として、リレーアタックなどの不正アクセスに強くセキュリティレベルが高いという特徴も備えている。
UWBを位置検知に使う場合、検知距離は見通しの良い状況で30〜40m、位置検知精度は近距離で±10cm程度、角度検知精度は近距離かつ±60度範囲内で±5度程度といわれている。位置検出の原理としては、信号の往復時間から距離を計算するToF(Time of Flight)、機器やアンテナ間の受信信号の位相差から角度を計算するAoA(Angle of Arrival)、機器間の受信信号の時間差から位置を計算するTDoA(Time Defference of Arrival)などがある。例えば、UWB対応機器からのスマートタグの位置を検知する場合には、ToFで距離を、AoAで角度を計測すればよい。工場や倉庫、病院などで多数のスマートタグを一元管理する場合には、アンカーと呼ぶUWB対応機器を複数設置すればTDoAによって位置を検知できる。
このように、屋内で高精度の位置検知をセキュアに行えることから、民生機器と産業機器におけるUWBモジュールの需要が拡大しつつある。村田製作所もこの需要に応えるべく、民生機器向けのType2BPと産業機器向けのType2ABの開発を進めている。
Type2BPは、NXP SemiconductorsのUWB IC「SR150」を搭載しており、IC内で位置検知処理を実行できる。3本の外部アンテナに対応可能なので3次元的な相対角度検知である「3D AoA」にも対応する。外形寸法は6.6×5.8×1.2mm、動作温度範囲は−30〜85℃。対応するUWBのチャネルはCH5、6、8、9。
民生機器向けで注目すべき用途としては、NFC(近距離無線通信)を用いた非接触ペイメントに今後UWBが使われる可能性がある点だろう。「NXP SemiconductorのICを採用したのはその分野で同社のシェアが高い点も考慮した」(村田製作所の説明員)という。
一方のType2ABは、QorvoのUWB IC「DW3120」とNordic SemiconductorのBLE(Bluetooth Low Energy)マイコン「nRF52840」に加えて、3軸加速度センサーも搭載している。「工場などで用いられる産業機器向けでは、UWBだけで位置検知が難しい場合もあり、そのためにBLEの機能も搭載した。同機能を搭載するモジュールとしては最小クラスだ」(同説明員)。外形寸法は10.5×8.3×1.44mm、動作温度範囲は−40〜85℃。対応するUWBのチャネルはCH5、9となっている。
また、両製品ともUWB搭載機器の評価と開発を早期に始められるように評価ボードも準備しているという。
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