フリートオペレーションセンターで統合表示ブロックと背中合わせに配置されている非常対応ブロックでは、選択した船舶を遠隔で操船できる機能を用意している。このブロックでは遠隔操船用シートの周囲に船上から送られてきた周辺海域の映像やレーダー画像、APU(行動計画=航海計画ユニット。電子海図にAISやレーダー、船舶搭載機器から取得した周辺船舶の船名、位置情報、速度、針路、海象状況などから実施すべき航海計画を提案する)画面、コニング(航海情報集約)画面、3D Bird View画面を配置する他、オートパイロットのコントロールコンソール、主機遠隔操縦装置を備えて、陸上から船舶の操船にも対応できるようにしている。
なお、フリートオペレーションセンターは陸上訓練用のシミュレーターとしても運用できる。その場合、「DNV」という船級協会が開発した仮想海洋空間「Cybersea」の上で航海状況を再現する。洋上の映像や周辺船舶の映像など「仮想環境の視覚化」には日本海洋科学が開発した操船シミュレーターのシステムを採用している。


非常対応ブロックでは、遠隔操船者用のシートを囲むように配置したディスプレイに船舶から通信で送られた船橋周辺映像やレーダー、電子海図、各種航海情報、3D Bird View画像を表示し、実船でも使われているコントローラーを用いて舵や主機を遠隔で操船する(左)。

船舶周辺映像ディスプレイの右隣には日本郵船グループが開発している避航経路提案システム「ARS」(Advanced Routing Simulation and planning)画面を配置する(左)。

下部右には各種航海情報を表示するコニング画面がある。速力から機関回転数、舵角、風速風向、ピッチ角ロール角、操船ポリシー設定値、水深、計画航路からのずれ、航海計器からの警報などを集約して表示する(左)。
3D Bird View画面の右には統合表示ブロックでも表示していたCIM画面を表示するディスプレイを用意して、遠隔操船対象船舶のサブシステム状態をチェックできるようにしている(左)。今回の施設公開では、日本郵船の船長経験者である桑原氏が非常対応ブロックの操船者シートに陣取り、遠隔による避航操船のデモを紹介した。なお、先に述べたように、フリートオペレーションセンターは自律運航船の遠隔監視と非常時における遠隔操船の拠点となるが、それとともに、遠隔監視と遠隔操船を実施する陸上配置の船長と機関長の訓練施設としても運用する。訓練においては実船による航海の代わりに「Cybersea」によって構築した“仮想洋上”の上をデジタルツインで再現した船舶データが航行する。
桑原氏によるデモでは、自船に向かって複数の衝突コースで航行する船舶をCyberseaの上で航行させるシナリオを用意し、システムが提案する避航計画を参照した上で、陸上船長である桑原氏が非常対応ブロックの操船者シートからMJS-9000とM-800-Vを操作して避航する操船過程を実演した。


遠隔による避航操船のデモでは、自船に複数の他船が衝突コースで向かってくるシナリオを用意して実施した。シナリオで設定した状況はCyberseaの上で進行し、日本海洋科学の操船シミュレーターシステムで可視化されて周囲映像として表示される。APUと3D Bird View画面にオレンジのベクトルで衝突リスクのある他船が正面から向かっていて、さらに、右に映っているCIMでは自律運航用サブシステムの状態が悪化して「Remote Fallback」モードになっていることを示している(左)。
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