日本郵船は日本の大手“海運”会社の1つだ。そのグループ企業には船舶関連技術の研究開発に取り組む日本海洋技術とMTIがある。彼ら日本郵船グループが手掛ける研究開発案件は、自動運航関連からリモートメンテナンス、環境負荷低減、高効率舶用ハードウェア、船舶IoT、航海情報統合管理システム、操船支援システム、船陸情報共有プラットフォームなど多岐にわたる。
編集部注 船の世界も、自動車の自動運転と同様に「自動運航技術」の開発が進んでいます。周辺監視(見張り)をセンサーでどうサポートするか、遠隔から操船を支援できないか、そもそも無人で操船できるか、といったテーマで研究開発が進んでいるのも、広い意味では自動車業界と同じです。
船と自動車。どちらもモビリティであり、物流や旅客輸送の今後の在り方にどう貢献できるかが問われています。MONOistのオートモーティブフォーラムをご覧になる自動車関連の読者の皆さまにとって、船の世界の技術がヒントや気付きにつながれば幸いです。
日本郵船は日本の大手“海運”会社の1つだ。そのグループ企業には船舶関連技術の研究開発に取り組む日本海洋科学とMTIがある。彼ら日本郵船グループが手掛ける研究開発案件は、自動運航関連からリモートメンテナンス、環境負荷低減、高効率舶用ハードウェア、船舶IoT、航海情報統合管理システム、操船支援システム、船陸情報共有プラットフォームなど多岐にわたる。
この中で、自動運航技術に関連したプロジェクトとして、次に挙げる案件が現在進んでいる。
国交省主導の海事生産革命(i-Shipping)における先進船舶技術研究開発支援事業とは、海事関連業界の生産性を向上するために先進的な技術を活用する研究開発事業を国交省が支援するプロジェクトで、日本郵船グループは、「船舶の衝突リスク判断と自律操船に関する研究」「大型コンテナ船における船体構造ヘルスモニタリングに関する研究開発」「船陸間通信を利用した LNG 安全運搬支援技術の研究開発」が支援事業として2016年に認可されている。
このうち、船舶の衝突リスク判断と自律操船に関する研究の事業内容として取り組んでいるのが、次の項目だ。
また、日本郵船グループでは有人自律運航船の技術開発を進めており、主に次に挙げる要素技術に焦点を当てている。
ここで挙げた「他船との衝突リスク判断を容易にする機能の開発」と「操船支援技術の高度化(状況認識、分析、判断、操作)」で重要な技術となるのが、衝突しそうな他の船を認識して避けるための「避航操船」だ。大阪府立大学・神戸大学との共同研究で進めている「人工知能をコア技術とする内航船の操船支援システム開発」では、この有人自律運航船で開発している避航操船技術に加えて、AI(人工知能)の一手法である深層強化学習を応用した避航操船技術の開発にも取り組んでいる。
それぞれ異なるプロジェクトとして進んでいるが、海運会社の日本郵船グループだからこそ可能な共通する特徴がある。それが「ベテラン船乗りの技を導入する」というアプローチだ。
自動運航技術に船乗りの技を導入するとはどういうことか。そもそも船乗りの技をデータ化できるのか。その疑問を日本郵船グループで自動運航船開発の責任者として研究開発に取り組んでいるMTI 取締役で船舶物流技術部門 部門長を務める工学博士の安藤英幸氏と、日本海洋科学 運航グループグループ長兼スーパーバイジンググループ グループ長代理の桑原悟氏に話を聞いた。なお、安藤氏はAI関連の技術者として長年研究開発に取り組んでいる。桑原氏は日本郵船の大型原油タンカー(VLCC)での実務経験も長い。
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