以上の構造マップ⇒機能マップから価値を抽出する。この際に、前回紹介したAshbyのチェックリストが参考になる。図6に価値の抽出例を示す。構造の中に“装飾”に関するものがあるが、これに相当する機能は“お茶を飲む”という機能には属さないと考え、価値として“見て楽しむ”に含めた。
図6からさまざまな価値が抽出できていることが分かる。そこで価値を下記のようにいくつかに分類、色分けしてみた。
次に、図6の価値の1つから、もしくはいくつかの価値の組み合わせからアイデアを創出する。この際に、前回紹介したアクションマトリクスの考え方に沿って、カップというものの原点に立ち返って考えるとさまざまなアイデアが浮かぶ。
最初に、図7の“冷めない、安心できる、適温である、持ちやすい”といった普遍的な価値群からアイデアを考える。一般には(人の嗜好もあるので一概には言えないが)このアイデアは「お茶が冷めにくい」「持ち手が熱くない」カップをデザインすることにつながる。この場合、カップの形状を固定して考えると“カップ材料の選定問題”に置き変えることができる。これに関しては次節で考察する。
カップというと、カップにお茶を注いで、カップを手に取って飲むということが暗黙のうちに前提になっている。そこで、次のアイデアを考えるために、この前提を取り除き(Eliminate)、ターゲットとして健常者ではない人が使用するカップを考えてみる。そうすると、図8に示すように、価値としては“弱者に優しい、使いやすい、安全である、洗いやすい”が相当し、これを実現する機能として「直接口から飲む」「カップの移動を支援」が出てくる。これを実現する方法としては、現状の“介護”もあるが、ここでは個人の自立性を考えて“ロボットとカップの合体”を考えてみた。ここまでアイデアが出れば、この具現化が次のステップとなる。
最後に、感性的な価値から少し奇抜なアイデアを考えてみる。図9に示すように、価値から“リラックスする、ひらめく、見て楽しむ、リッチになる”を選択し、これを実現する機能として「情報を発信する」「精神を安定させる」を考え、これの具体例として“音と映像が流れるカップ”を考えた。カップの側面にディスプレイ、カップの底面にスピーカを設置するなどしてもいいし、お茶を飲むという行為に、カップとは別に配備された映像装置、音響装置が連動して作動する仕組みを考えてもよい。前述の図8の例もそうであるが、出てきたアイデアをポンチ絵程度でいいので表現するとよりイメージが具体化する。
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