ラズパイでバルブの開閉状態をセンシングする(その1)ラズパイで製造業のお手軽IoT活用(10)(2/2 ページ)

» 2021年09月16日 11時00分 公開
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3.画像解析によるバルブの開閉検知

 バルブの開閉検知の画像解析は以下のような手順で行いました。

  • (1)ラズパイにカメラを設置
  • (2)カメラで定期的に画像撮影
  • (3)撮影した画像を解析し開閉を判断
  • (4)開閉信号を画面に表示

 (1)と(2)については、本連載第3回「ラズパイとカメラと100均の組み合わせで機械工具の在庫を可視化する」で紹介した方法を基にして、カメラの設置と撮影を行います。

 ここからは、バルブ開閉の状態を判断する上で最も重要な(3)について具体的に説明していきます。

(3)撮影した画像を解析し開閉を判断

 バルブの矢印方向の認識は、やはり「ラズパイとカメラと100均の組み合わせで機械工具の在庫を可視化する」でも採用した「OpenCV」を利用して行います。

 OpenCVの画像認識方式は主に次の5種類があります。

  • カスケード分類器:あらかじめ用意した形状とマッチしているものを検出
  • ハフ変換:直線や円を検出
  • Canny法:図形の縁取りをして検出
  • 外接矩形:長方形、三角形、円などの図形を検出
  • テンプレートマッチング:用意した画像とその位置を検出

 今回は、これらの中から画像の検出精度の高いといわれている「カスケード分類器」や「テンプレートマッチング」でバルブの画像を用意してそのまま認識させてみましたが、ほとんど矢印を認識しませんでした。そこで、「外接矩形」を用いて、バルブ中央部で2つに分かれている矢印の形を取り出し、それぞれの形の中心座標から矢印の向き=バルブの角度を算出して、バルブの開閉を判断するようにしました。そうすると認識率が向上しました。

図2 図2 バルブ開閉状態の解析手順(クリックで拡大)
図3 図3 画像解析の結果(クリックで拡大)

 画像解析のポイントは、形そのものを比較するのではなく、検知したい特徴点を明確にして、そこを検知できるようにすることが認識率向上の近道になります。今回は、矢印の形ではなく、矢印の角度の検知に焦点を絞ることによって認識率の向上につなげられました。皆さまが今後画像解析を行う際のヒントにしていただけますと幸いです。



 「撮影した画像を解析し開閉を判断」するというこの方法は、想定よりは認識率は高いものの、100%の開閉検知の保証ができるか何度も実証実験をする必要があります。そこで、もう1つの候補である「磁気センサーの使用によるバルブの開閉検知」を検討することにしました。次回は、その具体的な方法などについて説明します。

⇒前回(第9回)はこちら
⇒次回(第11回)はこちら
⇒本連載の目次はこちら

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筆者紹介

株式会社アムイ 代表取締役
山田 浩貢(やまだ ひろつぐ)

NTTデータ東海にて1990年代前半より製造業における生産管理パッケージシステムの企画開発・ユーザー適用および大手自動車部品メーカーを中心とした生産系業務改革、

原価企画・原価管理システム構築のプロジェクトマネージメントに従事。2013年に株式会社アムイを設立し大手から中堅中小製造業の業務改革、業務改善に伴うIT推進コンサルティングを手掛けている。「現場目線でのものづくり強化と経営効率向上にITを生かす」活動を展開中。


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