製造現場に広がる「画像」や「映像」の活用、何に生かすべきか:いまさら聞けないスマートファクトリー(12)(4/4 ページ)
「認識」の領域でも、従来センシングが行われていた以外の領域で活用が広がっています。
「認識」の領域ではどういう使い方が広がっていますか。
「認識」としては、個々にセンサーを付けるほど厳密ではない領域を「包括的に捉える」という点かしら。その運用性が向上したので、そこを活用するという感じかな。
そうね。例えば、カメラで工場内全体を撮影しておいて、認識技術で入っちゃだめな領域に入ったら警告鳴らすとかが簡単にできちゃうということ。各個人にセンサーもたせたり、エリアにセンサー付けたりするのよりも簡単にできますよということね。
なるほど。従来はセンサーを取り付けるほどではなくて、人の感覚で何となく捉えていた領域で活用すると生きる感じでしょうか。そういう領域をデータとして活用できれば、新たにできることはいろいろありそうですね。
先述したようにカメラの値段が安く高性能になっていることで「取りあえず工場の状態を見ておく」という使い方が可能になってきています。これに、AIを含めた認識技術を組み合わせることで、一定レベルの測定も可能となります。例えば、先述したような危険エリアに対する安全確保や、作業員やAGV(無人搬送車)の動線分析、異常発生時の対応分析などの用途が考えられます。
将来的にはこれらのような包括的な情報収集には「画像」や「映像」「音声」などの非構造化データを、認識技術によって抽出する形で行い、厳密な条件が必要な領域については個別のセンサーや機器の情報を活用するというような住み分けが進んでくると考えます。
また、製造現場における「映像」の活用は、現在のコロナ禍において、さらにクローズアップされたという面があります。
都市のロックダウンなども含め、遠隔地の工場に人が派遣できなくなる状況が生まれています。そういう中でも、生産の立ち上げや品質の確保を行わなければなりません。そこで、口頭での相談だけではなく、機器の数値などと合わせ、実際の映像を見ながら対応を進めていく利点が注目されているからです。製造現場におけるコミュニケーション基盤としての「映像」の活用です。こうした背景を踏まえれば、工場での「画像」「映像」の活用はさらに広がってくると考えます。
さて今回はスマートファクトリー化を進める中で活用が広がっている「映像」「画像」の使いどころと考え方についてお伝えしてきました。次回も、製造現場において失敗するパターンや見過ごされがちなポイントについてさらに掘り下げたいと考えています。
≫連載「いまさら聞けないスマートファクトリー」の目次
- スマート工場化を進めるのは現場の専門家? それともデジタル技術の専門家?
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。前回から製造現場でつまずくポイントとその対策についてお伝えしていますが、第11回では、スマートファクトリー化を進める上で必要な現場の体制作りの考え方について紹介します。
- 人手作業のデータ化、ポイントは「自然に自動で」
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。前回から製造現場でつまずくポイントとその対策についてお伝えしていますが、第6回では、人手さ作業のデータ化についてさらに掘り下げます。
- 古い機械や人手作業、データ化されていない情報をどうスマート化すべきか
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。前回から製造現場でつまずくポイントとその対策についてお伝えしていますが、第5回では、「データ収集」についてのアプローチと、データ化が難しい部分の対策について解説していきます。
- 製造現場で活躍広がる「画像×AI」、どういう場で生きるのか
グルーヴノーツは、「製造×画像AI」をテーマに2020年4月14日、オンラインセミナーを開催。グルーヴノーツ アカウントエグゼクティブ 岩野敦氏が製造業向けのインフラ設備・機械の保全・安全管理業務における画像AIの活用事例などを紹介した。
- 製造現場における画像処理【前編】
製造現場における画像処理技術とは何か? その特徴や導入時のポイントなどをきちんと理解し、生産性向上に役立てていきましょう。連載第5回のテーマは「製造現場における画像処理」についてです。具体的に画像処理が製造現場で効果的に利用されている実例を紹介します。
- スマート工場は“分断”が課題、カギは「データ取得」を前提としたツールの充実
工場のスマート化への取り組みは2020年も広がりを見せているが、成果を生み出せているところはまだまだ少ない状況だ。その中で、先行企業と停滞企業の“分断”が進んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID−19)対応なども含めて2021年もスマート工場化への取り組みは加速する見込みだが、この“分断”を解消するような動きが広がる見込みだ。
- エッジは強く上位は緩く結ぶ、“真につながる”スマート工場への道筋が明確に
IoTやAIを活用したスマートファクトリー化への取り組みは広がりを見せている。ただ、スマート工場化の最初の一歩である「見える化」や、製造ラインの部分的な効率化に貢献する「部分最適」にとどまっており、「自律的に最適化した工場」などの実現はまだまだ遠い状況である。特にその前提となる「工場全体のつながる化」へのハードルは高く「道筋が見えない」と懸念する声も多い。そうした中で、2020年はようやく方向性が見えてきそうだ。キーワードは「下は強く、上は緩く結ぶ」である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.