矢野経済研究所は、日本国内におけるポリプロピレン(PP)市場に関する調査を実施し、樹脂別、需要分野別の動向や参入企業の動き、将来展望を明らかにした。2021年の国内PP市場規模は、復調鮮明の自動車向け需要がけん引役となり、2019年水準近くまで回復する見通しだという。
矢野経済研究所は2021年8月24日、日本国内におけるポリプロピレン(PP)市場に関する調査を実施し、樹脂別、需要分野別の動向や参入企業の動き、将来展望を明らかにした。
2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大に見舞われ、多くの産業が影響を受けたことから、国内市場におけるPP出荷量(メーカー出荷数量ベース、輸出分含む)は前年比93.4%の233万3600t(トン)となった。
巣ごもり需要によってマスクや防護服などの衛生材料、衣装ケースなどの日用品や園芸用品などの需要が増加した一方で、構成比率の高い自動車分野では、自動車生産台数の減少などの影響を受けて需要が減少した。
国内PPメーカーの動きとしては、高付加価値品の生産効率向上を目的とした生産設備の積極的なスクラップ&ビルドが進み、生産効率の劣るスラリー法(溶媒プロセス)設備や中小規模の生産設備を停止する動きが見られた。
プライムポリマーは、2024年の稼働開始を目指して市原工場(千葉県)に年間生産能力20万t規模の気相法ラインの建設を発表している。日本ポリプロでも生産設備のスクラップ&ビルドを推進し、2019年9月から2021年2月までで年間2.6万tの生産能力を削減した。一方、2018年ごろの稼働開始に向けて年間生産能力10万t規模の設備投資を検討していた住友化学は、COVID-19の感染拡大を背景とする世界的な建設費の高騰や脱プラスチックの影響など事業環境の変化を受け、あらためて方向性の見直しを含めた事業化検討を継続するとしている。
2021年の国内PP市場規模(出荷量)は、前年比106.1%の247万4900tを見込む。復調が鮮明となってきた自動車向け需要がけん引役となり、2019年水準近くまで回復する見通しだ。
また、今後の市場拡大に向けて、国内PPメーカーは汎用(はんよう)品向けの量的拡大ではなく、高機能/高付加価値品への適用に取り組み、“PPでなければならない用途”への展開が求められるという。
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