矢野経済研究所は、2020年のセルロースナノファイバー世界市場に関する調査結果を発表した。2020年のCNF世界生産量は57t程度、出荷金額は68億4000万円を見込んでいる。
矢野経済研究所は2020年4月7日、2020年のセルロースナノファイバー(CNF)世界市場に関する調査結果を発表した。2020年のCNF世界生産量は57トン(t)程度、出荷金額は68億4000万円と予測する。調査期間は2020年1〜3月で、製紙メーカー、化学メーカーなどのセルロースナノファイバーメーカーを調査対象とした。
同調査によると、商業化が始まった2015〜2016年当初のCNF市場は、ラボベースでの試作、サンプル供給での展開が中心で、数字化されるほどの生産量はなかった。
2017年以降は、日本製紙や中越パルプ工業、星光PMCなどの各社が量産ラインを稼働させ、王子HD、大王製紙などのセミコマーシャルプラントが稼働を開始。その後、スポーツシューズや化粧品、食品などの市販品でCNFが採用されたため、2020年には世界生産量が57t程度、出荷金額が68億4000万円になる見込みだ。
現在、CNFの多くは、重量比(wt%)でCNF添加量が1%前後の機能性添加剤として採用されている。CNFの大量消費には、重量比(wt%)で10〜30%程度が添加される樹脂複合化用途での採用拡大、CNFを100%使用した成形品の製品開発が必要で、それらのサンプルワークが進められている。なお、CNF複合樹脂は、自動車部材での採用拡大が期待される。
CNFの用途には、樹脂複合化、機能性添加剤、その他用途が期待される。CNFは製法によって特性に差があり、同一用途で製法の違うCNF同士が競合することは少なかった。最近では、解繊方法による使い分けが崩れつつあり、今後は用途開発と市場開拓の両面で、製法の違うCNFの競合が予測される。よってCNFメーカーは、自社が提供するCNFの採用メリットをユーザー企業にどうアピールするかが課題となる。
そうした課題はCNF開発とサンプルワークによって解決されつつあり、現在は実用化と需要拡大を探る段階へと進んでいる。現時点ではCNFの市販品への採用例は限定的で規模も小さいが、ある用途が突破口となり採用が拡大する可能性も考えられる。
用途開発には困難が多いが、従来の切り口をベースに新たな価値観などを加え、常に変化させながら期待以上の価値を生むマッチングポイントの創出が求められている。それらを実行することで、2030年にはCNF世界生産量が3500t、出荷金額が205億円まで拡大すると予測している。
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