続いて、市川氏は「働き方の未来」につながるキーワードについて解説。まず、その大前提として、今後ITの世界で注目される「デジタルレジリエンシー」を紹介した。
デジタルレジリエンシーとは、近年IDCが頻繁に掲げているメッセージの1つであり、コロナ禍のようなディスラプション(破壊)が起こった際、単なる復元ではなく、変化が起きた状況をうまく活用して、デジタルの力でどうやってより良い状態に回復させるか、どうやってイノベーションの創出につなげていくか、という力のことを意味する。「今後、ITの世界ではこのデジタルレジリエンシーの力を獲得し、競争力を高めていこうとする企業が増えていくことが予想されている」(市川氏)。
こうした潮流を踏まえ、働き方の未来につながるキーワードとして挙げられるのが「ハイブリッド」だという。前述の通り、ハイブリッドワークは大企業を中心に積極的に取り入れられ、今後、珍しいものではなくなるとみられている。IDCは、2023年までにグローバル企業の多くがハイブリッドワークという働き方を採用すると予測している。
さらに、「オートメーション」もこれまでに引き続き、働き方の未来において重要なキーワードになっていくという。「ここでキーとなるのがAIだ。人間とRPAのようなデジタルワーカーが協働で作業を遂行するという世界は既に存在しているが、それがこの先さらに進化していく」と市川氏は述べる。
そして、「デジタル人材」も欠かせないキーワードとなる。市川氏は「これからは情報システム部門/IT担当者だけでなく、バックオフィスや営業、マーケティング担当者といった企業の全ての人たちがデジタル人材になる必要がある。あらゆる人材がデジタルの使い手にならなければならない」と指摘。例えば、RPAなどは既にローコード/ノーコードで開発が可能であるため、先に挙げたオートメーションに必要な自動化ツールのようなものを現場担当者レベルで構築することも不可能ではないという。
この1年、多くの企業がセキュアな在宅勤務環境を実現するためにいろいろな施策を打ち出してきた。今は、ようやくリモートワークができる環境が整備され、ほっと一息ついている状況かもしれない。
だが、市川氏は「世界は既に、COVID-19の次の世界に向けて動き出している。アフターコロナの働き方はどうあるべきかを常に考え、活動を開始している」と述べ、「COVID-19の後の世界のこと、そして、そのときの働き方はどうあるべきかを真剣に検討し始めるべきだ」(市川氏)と強く訴える。
一方、新しい働き方を推進するテクノロジーの活用については、「あらためて目指すべき(働き方の)姿を描き、それを実現するために必要なテクノロジーが何かを再考すべきタイミングにある」(市川氏)という。パンデミックに直面して緊急対応的に入れたテクノロジーを今後どうやって使っていくべきか、何とどうやってつなげるべきかなど、考えなければならないこともたくさんある。そういう意味で「テクノロジーを使い倒すフェーズに入っている」と市川氏は表現する。
また、デジタル化という側面では、これまで特にワークスペースの領域で進んできたといえるが、今後は人材教育やRPAに代表されるデジタルワーカーとの協働などを含めたより広い視野で働き方を捉えるべきだとし、市川氏は「働き方改革のその先にあるものが“DXである”ということを踏まえ、ぜひ取り組みを進めてほしい」と語る。
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