続いて、市川氏はハイブリッドワークに代表される新しい働き方を実現するキーとなるソリューションについて、約3年前にIDCが策定した「働き方の未来(Future of Workstyle)」と呼ばれるフレームワークを基に紹介した。
このフレームワークでは「CULTURE」「SPACE」「AUGMENTATION」の3つの領域で働き方の未来を捉えている。CULTUREとは、企業文化を意味し、自律的な働き方やエンゲージメント力の高い働き方ができる従業員を育てていくために必要なテクノロジーなどが含まれる。そして、SPACEとは、いつでもどこでも、セキュアに働けることを指し、AUGMENTATIONとは補強(増強)を意味し、代表的なテクノロジーとしてRPA(Robotic Process Automation)が挙げられるという。
まず、SPACEでは、コラボレーションツールの導入の観点から、会議システムとファイル共有システムについて取り上げた。会議システムに関しては企業規模や業界問わず多くが導入を進めているが、ファイル共有についても「導入率がこの1年間で2倍以上伸びており、IDCが測定しているさまざまなソリューションの中で最も高い伸びを示している」(市川氏)。
続く、CULTUREでは、HR(Human Resource)ツールの導入に関して勤怠管理システムと健康管理システムについて注目。在宅勤務中の部下の働き方を把握するためにPCのログを取得するツールや、在宅勤務だと把握しづらい身体や心の健康管理に関する計測ツールといったものも新たに登場しているという。
そして、AUGMENTATIONでは、自動化ツールの利用に関して、RPA/IPA(Intelligent Process Automation)、bot/チャットbotの導入率について紹介。「AUGMENTATIONに関しては、RPAが最も代表的なソリューションであるといえる。一方、企業内でのチャットbotの導入も増えている。社内のITサポートや総務人事への問い合わせなどへの対応にチャットbotのような親和性の高い自動化ツールが活用されている。
さらに、市川氏は近い将来、働き方やそれを取り巻くIT環境がどのように変化していくのかについて、IDCのデータを交えて解説した。
IDCが行った調査「今後も続く働き方やテクノロジーの進化」について、日本と世界でその結果を比較してみると、傾向としてはほぼ同じであるという。上位2つの項目は「クラウドを活用した接続やサービスの増加」と「リモートでハイブリッドな働き方」であり、これらが今後も継続的に進化していくとみられている。
また、「デジタルおよび物理的ワークスペースにおいては、インテリジェント化が進んでいく。CRM(顧客関係管理)やマーケティングオートメーションなどの領域についてはAI(人工知能)がドライブし、その精度がますます向上していく。さらに、設計からプロトタイプ製作の流れの中で、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)を活用したデジタル上でのモノづくりもデジタルワークスペースの拡大に含まれる。その一方で、物理的なワークスペースでは、入館時の顔認証と併せて体温を測定するなど、オフィス回帰に向けたツールの活用がどんどん進んでいく」(市川氏)という。
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