住友ゴム工業は、センサーを使わずにタイヤや路面の状態を検知する技術「センシングコア」の開発を強化している。
住友ゴム工業は、センサーを使わずにタイヤや路面の状態を検知する技術「センシングコア」の開発を強化している。
タイヤ内にセンサーを取り付けて路面のすべりやすさなどを検知しようとする試みは、タイヤメーカー各社によって行われている。しかし、タイヤ内部はセンサーにとって厳しい環境であり、数万kmの走行に対応した信頼性や耐久性の確保が高いハードルとなる。また、タイヤ内部に取り付けたセンサーでは、タイヤが1回転する際に1回しかデータが得られず、分解能に課題があるという。
まずはセンサーを使わないタイヤの空気圧監視技術を実用化し、段階を追ってタイヤの摩耗や路面の状態などセンシングできる領域を増やしていく。2025年ごろには、他のセンサー技術とセンシングコアを組み合わせて車両の制御にも貢献することを目指す。
住友ゴムの“センサーを使わないセンシング技術”は30年以上の歴史がある。1988年にタイヤの回転信号を基にブレーキのECU(電子制御ユニット)に搭載したソフトウェアを通じてタイヤの空気圧低下を検知する「Deflation Warning System(DWS)」の基本コンセプトを開発。1997年にDWSは北米で初採用され、現在までに累計4000万台に搭載された。
センシングコアはDWSの取り組みをベースにしている。タイヤにセンサーを追加しないことや、新車装着以外のタイヤやスタッドレスタイヤ、オールシーズンタイヤなどさまざまなタイヤに対応することを基本方針としている。
センシングコアの開発ロードマップは3つのステップで構成されている。ステップ1は、タイヤ空気圧の他、スリップしやすい状態やハイドロプレーニング現象、過積載や偏荷重、タイヤの摩耗などを検知し、ドライバーに情報を提供することを目指している。
例えば、空気圧はタイヤの回転と共振で、タイヤの摩耗や路面の状態はタイヤのスティフネス(剛性)で、荷重は振動特性の変化から分析することができるという。現在製品化されているのは空気圧のセンシングのみだが、ステップ1の各技術は実用化に近い段階にあるとしている。
ステップ2は、“すべりやすさマップ”の開発や、タイヤのメンテナンスの案内、道路の欠陥情報を基にした保守管理につなげるなど、クラウド上に収集したセンシングコアの情報活用がテーマとなる。
ステップ3では、自動運転やADAS(先進運転支援システム)向けのセンサーとセンシングコアが連携して車両制御を行うことを目指す。ただ、ステップ1のそれぞれの技術はさまざまなデータからいかにノイズを除去するかがカギであり、処理時間を考慮すると応答性の向上には限度がある。レスポンスが重視されない用途か、V2Xの補強などでの活用を見込む。
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