大手タイヤメーカーの住友ゴム工業が、タイヤ生産のスマート化に向けた取り組みを加速させている。この取り組みをけん引する同社 タイヤ生産本部 設備技術部長 製造IoT推進室長の山田清樹氏に話を聞いた。
大手タイヤメーカーの住友ゴム工業(以下、住友ゴム)が、タイヤ生産のスマート化に向けた取り組みを加速させている。2017年4月にタイヤ生産本部内に設立した製造IoT推進室が中核となって、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用したプラットフォームにより、高品質かつ高効率なタイヤ生産を実現するシステムのグローバルな構築を目指している。
2019年10月には日立製作所、PTCジャパンとの協業を発表。3社で協力して、住友ゴムの名古屋工場(愛知県豊田市)をモデル工場に、2025年までにスマート工場システムを国内外12拠点のタイヤ生産工場に導入する計画だ。
これら住友ゴムのスマート工場プロジェクトをけん引する製造IoT推進室の室長とともに、タイヤ生産本部の設備技術部長を務めているのが山田清樹氏だ。山田氏に、これまでの経歴や、製造IoT推進室立ち上げのきっかけ、製造業がIoT活用を円滑に進めるために何が必要になるかなどについて聞いた。
ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
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MONOist 現在、住友ゴムにおけるタイヤ生産のスマート化をけん引する立場にありますが、これまでどのような経歴を積み重ね来ましたか。
山田氏 1986年の入社で本社工務部に配属されてから、一貫してタイヤの生産と関わる業務を経験してきた。また、工場へのPC導入やIT化に深く関わってきたことも大きな経験になっている。
入社当時は、PCが工場に入り始めたころで、ラインや計測器をPCで制御するのに必要なハードウェア構築やソフトウェア開発に従事した。ハードウェアで言えばPC-9801やその拡張バスであるCバス、プログラミング言語であればBasicやC言語、アセンブラの他、マシン語にも直接手を加えることもあった。
1993年に白河工場(福島県白河市)に異動した。ちょうど、タイヤにバーコードを張って生産管理を行うようになったころで、ファクトリーオートメーション(FA)として電気制御による自動搬送技術を生産ラインに展開していた。その後、2000年に本社に戻り、これまでの経験を生かして工場をIT化するための業務を担当した。工程間をイーサネットでつなげて、それらのデータをサーバに上げる仕組みを構築し、集まったデータから生産指示を行う電子かんばんシステムの開発も行った。
2005年からは、中国、タイ、インドネシアなど海外工場の立ち上げに携わった。ここまではFA関連の業務を担当していたが、2008年にFA系からいったん離れ、タイヤ生産本部内の企画グループの責任者として予算管理を任された。2011年には、名古屋工場に戻り、FAだけでなく設備やユーティリティーを含めた生産工程全体を管理する工程課の課長に就任した。ここで最重要課題として捉えたのが「安定稼働」だった。
そして2016年に本社に戻り、現職である設備技術部(当時は設備管理部)の部長に就任した。そこで課題として挙がったのが、工場のスマート化やIoT活用だった。
MONOist そして2017年4月に製造IoT推進室を設立し、現在の取り組みがスタートしました。どういった経緯で設立することになったのでしょうか。
山田氏 本社に戻った2016年は、製造業におけるIoT活用が大きな話題になり始めたころだ。そこで、IT企画部長、製造企画部長、そして設備管理部長の私の3人で話す機会があり、当社の工場でもIoT活用に取り組まなければならないという意見でまとまった。その話を具体化して担当役員に提案し、その推進役として私に白羽の矢が立った。
MONOist トップダウンでもボトムアップでもなく、ミドルからの発案だったんですね。ただ、一般的に製造業では、モノづくりの現場部門と情報システム部門の間に相克があります。情報システム部門側であるIT企画部長と、モノづくり現場側の製造企画部長と設備管理部長が気楽に話し合えるイメージはあまりないのですが。
山田氏 これはたまたまだが、IT企画部長と製造企画部長が同期入社で気楽に話をする仲で、モノづくり現場系で私と関係の深い製造企画部長がつなげる形で、3人のミドル人材が意気投合することができた。
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