matomatoは、愛知県名古屋市緑区の有松/鳴海地域の伝統工芸品「有松絞り」の技術継承と保存を目的に、デジタルファブリケーション技術を活用した“デジタルアーカイブ化”に取り組み、その第1弾として有松絞りの凹凸を転写したテーブルを制作した。
matomatoは2021年5月19日、愛知県名古屋市緑区の有松/鳴海地域の伝統工芸品「有松絞り」の技術継承と保存を目的に、デジタルファブリケーション技術を活用した“デジタルアーカイブ化”に取り組み、その第1弾として有松絞りの凹凸を転写したテーブルを制作したことを発表した。
有松絞りとは、有松/鳴海地域に江戸時代初期から伝わる絞り染めの伝統技法である。軽やかで涼しげな美しい模様が描かれた有松絞りの織物は、手ぬぐいや浴衣地として長年人々に愛され続けてきた。有松/鳴海地域は全国一の絞り染めの産地として知られ、1975年に愛知県内で初めて国の伝統工芸品に指定された。
現在、他の伝統工芸と同様に、有松絞りも後継者不足が深刻化しており、このままでは美しい模様を描き出す、職人による高度な絞りの技術が誰にも継承されぬまま途絶えてしまう可能性がある。
そこで、matomatoはデジタルファブリケーション技術によるデジタルアーカイブ化(伝統工芸の保存)と活用を検討し、有松絞りの新たな継承方法として3Dスキャンとレーザーカッターによる取り組みに着手した。
その第1弾として、有松絞りの凹凸を転写したテーブルを制作。具体的には、3Dスキャンした有松絞りの凹凸を、レーザーカッターを用いてテーブルの天板となる木材の表面に彫り込んだ。有松絞りの素材は山上商店が提供し、3Dスキャンおよびレーザーカッターでの加工はND3M(Nagoya Digital Design Developers Meeting)の池本しょうこ氏と田住梓氏が担当した。
制作過程では、有松絞りの美しさを表現するだけでなく、テーブルとしての機能も果たす必要があるため、3Dスキャンした有松絞りの凹凸を滑らかにして調整したり、木材への転写では素材の良さをどのように生かせばよいか試行錯誤したりなど、数々の試作を経てようやく完成に至ったという。
現在、完成したテーブルは、愛知県の地域性/工芸品をテーマに、7組の建築家が一部屋ずつデザインを手掛けた宿泊施設「SEVEN STORIES(セブンストーリーズ)」の6階、“有松”をテーマにmatomatoが内装デザインを施した部屋に置かれ、宿泊者が実際に使用(体験)できる状態にある。
同社は、今後も日本の伝統工芸の素晴らしさをデジタルファブリケーション技術でデジタルアーカイブ化する試みを続け、場所を問わず伝統工芸の良さを後世に伝えられる取り組みを行っていくとしている。
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