多品種少量製品の需要が限られているときや、ある時期の需要を満たす製品数量を周期的に造っていく方式を「ロット生産方式」といいます。その経済的なロット量と生産サイクルの周期を最小費用基準で決定します。
各企業は、経験的にそれぞれの現場に適したロット編成法を作成していますが、特に見込み生産方式の職場では、ロット編成は工程管理にとって重要な要素となります。受注生産では、オーダー分のみをロットとするため、基本的には個別生産といえます。
レイアウトの多くは、機械設備の編成形式の1つでもある、同一の機能を持つ機械設備をグルーピングして配置した機能別配置(ジョブショップ型レイアウト)であり、製品種類も多く素材が加工工程に投入されていても、どこの工程まで進んでいるかを工程ごとの完成報告により把握しなければならなりません。完成報告には作業カードを用いるのが一般的です。この形態の進度管理の特徴は表2の通りです。
特に計画の精度については、日程計画の立案において精度の高いものは計画立案をしないで、進度管理を通じて精度を上げて行こうとする傾向があります。このため、この形態における進度管理は工程管理そのものであるという見方をすることが多く、進度管理の負担が大きくなります。
また、生産途中における不良品の発生や設計変更の処置についても、迅速かつ確実な処置が必要とされますので、現品の進行と所在を常に監視しながらの管理が必要となります。迅速な処置をとるために、指示や報告などの帳票の取り扱いを後回しにする必要も出てきますが、このような例外処置に際しても常に管理の意識を持って当たらなければ、事務処理のルールが乱れてしまい全くの成り行き管理に陥ってしまう場合が多く、特に注意を必要とします。
生産遅延の挽回や特定作業の進度の促進は、比較的行いやすいのですが、その反面、促進の対象にならなかったものが遅延してしまうことで、機械設備や作業者の稼働率を低下させる原因になってしまいます。しかしながら、非量産形態においては、このようなことは避けられないことですので、生産計画で手配番数(手番:基準日程から決められる生産に必要な日数こと。通常1日を1手番とするが、生産形態によっては半日や2日、1週間を1手番とする場合もある)の設定や生産能力の算定に多少のゆとりを考慮する方法で解消するのが一般的です。ここでは、特に現場監督者と関連の深い、機械工程の管理方式と作業の分配業務について説明したいと思います。
機械加工の工程は、製品の組み立てに直結する部品加工の最終段階でもあり、単に部品個々の進捗状況にかかわるだけでなく、製品全体の総括的な取りまとめに役立つものでなければなりません。
そこで、個別的な管理は、特に工程が複雑で重要度の高い部品のみにとどめ、その他の大部分の小物部品については、一括して管理できるような管理方式を設定しなければならなくなります。従って、両方式が互いに無関係であってはならないのはもちろんのことですが、常に両方式の統一的で調和的な運営がなされなければなりません。
大物部品は、小物部品に比べて部品点数が少なく、かつ加工時間、工程数が比較的大きいことが特徴です。さらに、製品の売り上げや寿命をも左右する主要部品が大部分であり、しかも大型機械設備に関しては、ネックとなる機械設備が多く、工程的な融通性の低いのが常です。
これらのことを考えると、大物部品については部品の1つ1つ、機械設備の個々にわたって、その時々の事情の変化に応じた管理を行わなければなりません。すなわち具体的には、列車ダイヤのような番割に従って、日々の作業計画を立案する必要があります。従って、その日程計画は、材料の入手期限、機械加工の期限、機械別の作業余力などの諸事情を勘案しながら部品別、機械別にそれぞれ作成し、作業の推進と管理を行うものでなければなりません。
小物部品については、概して工程が短くて加工も単純で、加工時間も短く部品の数量は圧倒的に多いので、一括管理でなければ処理し切れないものです。しかし、これについては、できるだけ確実で効果的な仕組みにしておかなければ混乱を招くことになります。
そこで、具体的には、まず何よりも部品の大半が何ら調整を加えることなしに、その加工期限を厳守できるような管理体制を確立します。特に、加工完了期限に遅れた例外的な部品のみを重点的に把握できるようにしておかなければならなりません。
この意味において、全ての管理および作業量の消化については、週単位に行う「週集中作業進行方式」が採用される場合が多く見られます。
小物機械加工部品の計画した作業量の消化については、一般的に前項でも挙げた通り、「週集中作業進行方式」が採用されています。この方式は“週集中”とありますが、それぞれの作業指示に対して週単位、製品機種ごと、あるいは工程ごとに集計した作業量と週単位の各機械設備の能力との均衡を勘案した上で、加工品の投入量を決定し、これを推進します。
週単位の生産計画の決定に基づき、機械加工作業の推進を図るのが「作業配給」です。その際に特に現場とのつながりは大きいものがあります。作業能率の向上、週の遅延は全くないということを念頭に推進しなければなりません。特に、週遅延については、作業の実行者は作業現場ですので、お互いに十分な連絡を取り合い、事務的な理由によるトラブルが起らないように作業手配に注意を払わなければなりません。「週集中作業進行方式」を推進するための遂行業務の内容を表3に示しました。
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進度管理では、生産日程計画に対して忠実に生産が進められ、統制によって微調整が加えられ変更されることが想定されます。流れの初期工程であればあるほど、納期や指定の加工完了日に対する厳守意識は薄く、これらの過程で遅延原因が多く発生して、やがて総組み立てなどの最終工程に短時間で作業を完了させなければならないというような、しわ寄せなどの影響を及ぼしてしまうことはよくあることです。進度管理の重要な機能は、不良発生や設備故障、工数見込み不足などに対して、これを早期に発見して処置していくことにあるといえます。
工程管理責任者がこれらの不具合事項に対して、適切な判断と処置を行うことが重要であり、対応が遅れてしまうと、最終工程までその影響を引きずってしまい、仕掛かり品が増えて結果的にリードタイムが異常に長くなるというような結果を招いてしまいます。工程管理責任者は、特に製造開始時点での統制に気を配り、遅延状況などから全体的な面で判断を加え、進度管理を行うように努めていかなければなりません。どんなに立派な生産日程計画を立案しても、何らかの不具合が発生してしまうのが“現場”です。
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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