カシオが取り組む“人作業の見える化”、ミズスマシなど準直接作業の効率向上:スマート工場最前線(3/3 ページ)
これらの実証により、さまざまな成果が得られたという。例えば、準直接作業者の分析で、生産エリアと倉庫エリアのそれぞれの滞在時間を見ると、10時と15時に倉庫内にいる時間が多いと分かった。これは「在庫数の計算や開梱作業、目視計算などを行っている時間だった。このように数値やグラフで変化を捉え、それを動画で確認することで分析を行える」と鈴木氏は語る。同様にピッキング作業の回数や所要時間を見ると、14〜15時の間に移動時間が23回と移動が集中していることが分かった。これについては、梱包資材の運搬や社内成形品の運搬が原因だったという。
その他にもミズスマシや搬送系作業などの準直接作業の担当者は、直接作業の作業員に比べて約10倍の運動量となっていたが、運動量の最大値は大体同じであり「作業負荷の限界などの指標とできるのではないか」(鈴木氏)ということや、総組エリアの一部に激しい反復作業が発生している場所があり、立ち寄りの回数を減らすための部品供給方式の工夫につながるなど「実証試験だが実際に改善のヒントになる点が多く見つかった」と鈴木氏は語る。
ピッキング回数の分析、倉庫から生産エリアへの移動回数(クリックで拡大)出典:カシオ計算機資料から編集部で作成
定点カメラでの作業分析では、モーションキャプチャー機能とAIとの組み合わせにより、手首の位置を把握することで、AIを活用しネジ締めや貼り付けなどの作業内容を分類し、詳細な作業時間の把握なども行うという。
2021年3月には、さらに規模を拡大し、同じラインで1直と2直の違いなどの分析を行うために実証を進めるという。実証試験の手応えについて、鈴木氏は「じっくり見れば誰でも気が付くが、現場ではその時間が取れないというのが現実だ。これを数値やグラフで明確に示せることで、すぐに問題に気が付ける。これがとても重要だ。さらに、数値化されているために対策にかかる費用対効果を明確化しやすい。また、日々、自動的に分析できれば変化への予測ができる。人作業の高度なIT支援ができるようになる」と語っている。
今後は、さらに実証試験を続けるとともに、2022年春からは運用を定着させ、本格展開を開始する。関数電卓以外の製造などにも適用する他、海外ラインへの適用も進めていく。
鈴木氏は「コロナ禍で人の移動が制限される中でも設備についてはIoT化ができているために、遠隔での立ち上げなども行えるようになっている。これを人作業でも実現できるようにしていきたい。現状では、設備の稼働率が良くなっても、実際にはその運用に多くの人手が必要である場合は把握できない。工場全体の最適化を考える上で、設備と人、それぞれの見える化やデータ化は必須となる」と考えを述べている。
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