東京都市大学は、バーチャル空間を体験する没入型ディスプレイのタイプ別効果を検証し、認知活動の促進には、頭部装着型(HMD)よりも室内投影型(CAVE)の方が効果的であると発表した。
東京都市大学は2021年2月15日、バーチャル空間を体験する没入型ディスプレイのタイプ別効果を検証し、認知活動の促進には、頭部装着型(HMD)よりも室内投影型(CAVE)の方が効果的であると発表した。同大学 メディア情報学部 情報システム学科 教授の市野順子氏らが、工学院大学、香川大学の協力を得て明らかにした。
研究では、360度のバーチャル空間を提示する2種類の没入型ディスプレイについて、ユーザーの認知活動(思考)に及ぼす影響を評価した。没入型ディスプレイには数種類あるが、今回の実験では、頭部に装着するゴーグル型のヘッドマウンティングディスプレイ(HMD)と、室内で四方の壁に360度の動画を映すプロジェクション型ディスプレイ(CAVE)を用いた。
大学生15人がHMDとCAVEを用いて複数の360度動画を視聴し、脳波や心拍、鼻部皮膚温度などの生理的指標、360度動画の左右、後方をどれくらい見回すかなどの行動的指標を用いて認知活動の過程を測定した。また、動画の内容の記憶テストを視聴後に実施し、認知活動の性能を測定した。
実験の結果、CAVEでは視聴中に適度な認知負荷が掛かり、記憶テストの点数が高かった。HMDでは、視聴中、動画の後方までよく見回すものの、記憶テストの点数は低かった。
このことから認知活動の促進では、HMDよりCAVEの方が効果的であることが分かった。活発な認知活動が期待される教育や学習などの場面では、CAVEによる360度動画の視聴が効果的だと考えられ、探検ツアーや博物館などでの活用に適している。一方、トラベルコンテンツやバーチャル展示会といったエンターテインメント性の高い360度動画は、HMDを用いてサービスを提供することが期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.