製造業が「サービス化」を実現する4つのパターンとそのポイント顧客起点でデザインするサービスイノベーション(4)(1/3 ページ)

製造業がサービス化を実現するためのポイントとしてサービスイノベーションの手法や事例について紹介する本連載だが、第3回となる今回はPoC(概念実証)など、ソリューション開発におけるアジャイル型の取り組みや、将来の実務適用を加味したアーキテクチャデザインについて、その有効性と方法論について紹介する。

» 2021年02月22日 11時00分 公開

 製造業を取り巻く環境で不確実性が増す中、持続可能性を確保するために「モノ」としてのビジネスに加え、サービスビジネスを組み合わせることが重要になってきている。本連載では、製造業におけるサービス化を実現するための示唆を、製造業読者に与えることを目的として、顧客起点でデザインするサービスイノベーションの手法、事例、勘所について全4回の連載記事でお伝えしている。

 最終回となる今回は、第2回での顧客インサイトを軸としたサービスデザイン、第3回のアーキテクチャデザインの進め方を受け、サービス化をビジネスとして成立させていくためのビジネスモデルデザインの方策について、サービス化の類型を行いながら紹介をしていく。

photo 図1 第4回で取り上げる対象領域(クリックで拡大)出典:フューチャー

サービス化の類型

 製造業のサービス化については、2000年代後半より多種多様な研究が行われており、それらの中で顧客との関係性などの基準からさまざまな類型化の試みがなされてきた。本稿では、2020年代を迎えて具現化しつつある新しいビジネスモデルも踏まえ、「製品」と「顧客」のそれぞれの観点において、「既存」と「新規」という関係性から、「従量課金」型、「顧客業務代替」型、「パッケージサービス」型、「データビジネス」型という4つの類型化を行った。

 今回は、この類型についての事例、ビジネスモデル実現に当たっての勘所、グローバルなビジネス動向について紹介していく。

photo 「サービス化」の4つの類型(クリックで拡大)出典:フューチャー

「従量課金」型

 「従量課金」型のサービスモデルは、これまで機器売りをしていたビジネスモデルを転換し、顧客が求める価値提供に対して課金をするビジネスモデルである。これは「レビットのドリル穴理論(※)」をビジネスモデルとして体現しているサービス化事例である。例えば、ドイツのケーザー・コンプレッサー(KAESER KOMPRESSOREN)の取り組みが、2014年度のものづくり白書でも紹介されている 。同社は、コンプレッサーの運用を顧客に代わって実施し、供給した空気の容量に応じて課金する新たなビジネスを開始した。つまり、コンプレッサーのサプライヤーから圧縮空気のサプライヤーへと自らのビジネスモデルを変化させたと解釈できる。

(※)レビットのドリル穴理論:ハーバード大学大学院の教授で米国のマーケティング学者であるセオドア・レビット(Theodore Levitt)氏が1968年に出版した著書で紹介した理論。「ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく『穴』である」と製品のもたらす価値に焦点を当てた。

 このビジネスモデルは、以下の6つの点で利点をもたらすと分析されている。

  1. ストックビジネスによる収益の安定化
  2. 顧客囲い込みによるさらなる提案機会の創出
  3. 競合企業とのコンペにおける勝率の向上
  4. 景気変動に対する堅牢性の向上
  5. ワンストップサービスによる要員負荷の軽減
  6. 製造業務の総コストの削減

 これらのメリットは、全てのサービス化に共通している。このビジネスモデルを実現するには、機器売りのフロービジネスからストックビジネスに転換する際の一時的な売り上げ減少や、縦割りの部門間利害関係の調整などを乗り越える必要がある。ケーザー・コンプレッサーでは「業界中位というポジショニングを打破したい」という強い意思もあり、これらの各種障害を乗り越えてビジネスモデルを転換したという。同社のビジネスモデル転換やそれに向けた障害克服については各種論考において記述されているため、本稿では省略する。

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