AIを活用した蓄電池システムの故障予兆検知技術を共同開発:製造ITニュース
NTTコミュニケーションズとGSユアサは、AIを活用して蓄電池システムの故障予兆を検知する技術を共同開発した。GSユアサ社内の電力貯蔵装置で評価したところ、従来の自動警報発報システムと比較して、最大2カ月程度早く検知できた。
NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2020年12月25日、GSユアサと共同で、AI(人工知能)を活用して蓄電池システムの故障予兆を検知する技術を開発したと発表した。NTT Comのディープラーニングを用いた時系列データ解析技術と、リチウムイオン電池を活用したGSユアサの社内設備の蓄電池データを活用している。
今回開発した故障予兆検知技術は、両社が2016年より開発を進めてきたものとなる。蓄電池システムは故障頻度が少なく、偶発的な故障は事前に予測できないため、AIの学習用データとして故障した蓄電池のデータを用いるのは難しいという課題があった。
同技術では、教師なし学習の1種である「Autoencoder」を活用。Autoencoderは、入力データを圧縮して同じデータに復元されるように学習する過程で、データの特徴量を抽出できる。また、正常時の特性が変化しても対応可能なメンテナンスフリーのAIも開発した。
大規模蓄電池システムの状態監視のイメージ(クリックで拡大) 出典:NTT Com
GSユアサ社内の電力貯蔵装置で評価したところ、正常な蓄電池に対しては、故障予兆を検知しなかった。一方で、正常な蓄電池とは異なる特性データを示す仕掛けをした蓄電池は、従来の自動警報発報システムと比較して、最大2カ月程度早く検知できた。
今後、GSユアサでは、同技術が各種用途で利用される蓄電池システムに対して有効か検証を進める。加えて、遠隔監視システムで収集したビッグデータから蓄電池の故障データを抽出して学習させ、蓄電池の故障を特定する技術も検討していく。
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