ハイブランドの信頼を確保、プロ用音響ケーブルメーカーのスマート工場化:スマート工場最前線(2/2 ページ)
先述したようにケーブルや電線の製造方法は、基本的には多くのメーカーで共通である。まずは銅線を細く伸ばし、絶縁のためにプラスチックで被覆する工程を経て、これらをより合わせる工程に進む。さらにより合わせたケーブルを被覆し、完成となる。ケーブルをドラムに巻き取ったものを製品として出荷する場合もあれば、民生向けではコネクターを付けて小分けにして製品にするところまで行うケースなどもあるという形だ。その中で電線メーカーがそれぞれの製品の差別化をどのように行うのかというと、銅線やコーティング材、被覆材などの配合で特性を作り出すという点と、狙った特性を発揮するための製造の精度と、これらから生まれる信頼性である。
ケーブルの生産工程の様子(クリックで拡大)
モガミ電線でも基本的にはこれらの工程は変わらない。さらに、電線の工程が長く変わらないという特性から、メインで作業する機械では、数十年たったものが数多く使われている状況だ。当然古い機械では、作業中に徐々に精度が落ちるケースなども多く発生する。電線の製造工程では、製造作業そのものはほぼ全てが自動化されており、これらの機械作業の品質を守り「信頼性を守る」ための工夫が重要になる。
年代もののより合わせ機がフル稼働している(クリックで拡大)
そこで、モガミ電線ではこれらの作業管理に積極的にデジタル技術の採用を進めている。ライン内に計測装置を設置し、これらの情報をライン内に設置されたPCに送り、PCが社内システムと連携する形で、品質情報の管理と、不具合発生時のアラート発報などを行う仕組みを採用している。
ライン内にいくつもの計測装置を導入し必要な項目を測定している(左)これらの情報をPCに送り、PCと社内システムの連携でトレーサビリティー情報の収集やアラート発報などを行う(右)(クリックで拡大)
得られた情報は、社内システムへのアクセスにより、スマートフォン端末などからも閲覧可能で、ラインに張り付かなくても生産情報や品質情報を確認できるようになっているという。「重要なのはデジタル技術の活用ではなく、顧客が求める『信頼性』を確保するということ。以前は最終検査で品質に問題があるものを抜くという形だったが、それでは生産ラインの中に問題が残り続けることになる。生産工程での品質の測定を行い、それをリアルタイムで把握できることで、生産ラインそのものの問題も見えてくる。これらにより信頼性を確保する生産ラインを作ることができる。そのためにはデジタル技術の活用が必要だった」と中西氏は語っている。
スマートフォン端末で各ロットの生産品質などを閲覧することも可能(クリックで拡大)
≫連載「スマート工場最前線」の目次
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