「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像
特集
» 2020年12月21日 06時00分 公開

トヨタ自動車が描く、自動運転車の普及への道のりJIMTOF2020(2/3 ページ)

[一之瀬 隼,MONOist]

自動運転により移動の機会が広がる

 基調講演では「自由な移動」についても触れた。トヨタ自動車は、モビリティの量と質で生活が大きく変わると考えている。質のいいモビリティが減少すれば、生活圏が縮小し、家にこもりがちになり、社会的接触や運動量が減少するという、負のサイクルに陥る。逆に質のいいモビリティを確保できれば、反対の正のサイクルを経て健康で自立した生活ができる。さらに、労働力の確保や医療費の低減、経済活動などの副次的な効果も大きくなる。

 自動運転技術は、物流や人の流れ、データの活用といった観点でも貢献できる可能性がある。例えば物流では、自動運転で道の空いている夜間に移動することで、輸送力の向上や、ドライバー不足への対策となる。また人の流れでは、パーソナルな公共交通機関の実現や高齢者のラストワンマイルに貢献できる。データの活用では、自動運転車から集めたさまざまな情報を元にした、新たなサービスの開発が期待される。このように、自動運転車は大きな可能性を秘めている。

自動運転とは

 ここからは、自動運転システムの特徴や必要な技術について紹介する。自動運転システムは、人が運転する際のプロセスである認知や判断、操作を代行するもので、センシングや高精度地図、コネクテッド技術、AI(人工知能)、システムの安全設計などの技術が必要となる。

自動運転精度を高めるセンシングとコネクテッド

 自動運転システムのセンシングは、信頼性を高めるために車両の360度をミリ波レーダーやLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)、カメラなど複数の検知方式のセンサーを用いて、冗長化しながらカバーしている。センサーにはそれぞれ得意・不得意があるため、それらを補い合うことで精度の高い検出が可能となっている。

 特に近年は、LiDARの開発競争が激しい。単に周囲の障害物を認識するだけでなく、高精度地図と照合することで自車が地図の中でどこの位置にいるのか高精度で推定でき、自動運転システムの性能向上に大きな効果が期待できる。

 認知の精度を高めるためには、インフラや他の車両と連携するコネクテッド技術や、地図情報のリアルタイム性も重要だ。自車で持っているセンサーから得られる情報を補完でき、さらにセンサーの検知範囲よりも遠くの情報を得られる。また、車両自体が通信できることで、地図やソフトウェアのアップデートを遠隔でできるようにもなる。最近では、地図のない道路であっても、複数のクルマの走行データを組み合わせることで複雑な立体交差にも対応した地図を自動的に作る技術が開発されている。

 自動運転における認知や判断の精度を高めるためには、データの量と質が重要である。自動車のデータとしては、センサーから取得したデータや通信データがある。これらの情報は、ディープラーニングと呼ばれるAI技術を活用することで、従来の認識技術に比べて精度を高められる可能性を秘めている。この技術が進展していくことで、認識した画像の中で一部しか見えていないものを正確に判断したり、画像の中を車道・歩道・店舗などのようにセグメント分けしたりできる。

 これらを用いることで、クルマの高性能化や新たな価値の創出につなげられる。質の高いデータとは、特に画像データなどの情報で、自動運転車が普及することで、質の高いデータを豊富に集められる可能性がある。

ドライバーと自動運転システムの切り替え

 自動運転はその対応状況によって、レベル1〜5に分類されている。特にレベル3はドライバーと自動運転システムの間で、自動車をコントロールする主体が切り替わる点が特殊だ。人がシステムの状況を把握するために分かりやすく情報を掲示し、システムはドライバーの状態を把握するための、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)が重要となる。ドライバーの状態を検知する手段としては、顔の向きや目の開け閉めを検出する技術を既に商品化済みだ。今後に向けて、ドライバーの視線や覚醒度を検出できるような機能を開発中である。

 このような機能により、システムがドライバーの状態を把握しながらドライバーと協調することで、安全な切り替えを実現しなければならない。

 また、安全な切り替えに関して課題となるのは、自動運転中に故障が発生した際に速やかにドライバーが運転を代わるという場面だ。そこで、自動運転では故障が発生してもドライバーに安全に受け渡すまでの間、システムが適切に制御を継続する必要がある。そのために、電源やブレーキ、センサーなどの認識系などは冗長設計を行うことが重要である。

 自動運転車には乗り心地も求められる。乗り心地の良さを実現することは、自動運転車を利用する人の安心感につながる。自動運転車ではアクセルやブレーキ、ステアリングなどクルマの動きに関する部分をシステムが制御しており、トヨタ自動車では加速度や左右の動きがスムーズにつながるような開発を進めている。既に熟練のプロドライバーのような加速度の変化が少ない安定した走行を、かなり高いレベルで実現できているという。

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